TOP > 株式会社ウエストエネルギーソリューション 代表取締役社長 恩田英久氏インタビュー

地域経済を活性化!「創エネ・蓄エネ・省エネ」

 株式会社ウエストエネルギーソリューションは、太陽光発電事業のEPC・IPP 事業を堅調に拡大し、産業用太陽光の「工事請負件数:全国6,000 件」「メガソーラーの建設・販売件数:180 件以上」の実績があります。全国50行を超える当社提携先金融機関や大手会計事務所とのビジネスマッチングやお取引にて良好なお付き合いが出来ていることも、ここまで成長してきた大きな要因です。今回は、太陽光発電を取り巻く環境の変化や地方創生との関わり方について、恩田社長にお話を伺いました。

聞き手:リッキービジネスソリューション(株) 代表取締役 澁谷 耕一

太陽光発電事業は今後どうなるのか

(澁谷)

太陽光の価格においては、国の買取制度が大きく関わってくると思いますが、現在の太陽光発電を取り巻く環境についてお聞かせください。

(恩田社長)

太陽光の買取価格は、グリッドパリティ※に向けて賦課金という国民負担とのバランスも考慮しながら更に下がってきます。ただし、全国の設備認定容量80GWのうち稼働しているのが未だ20%弱という状況です。未稼働案件の設備認定の失効に向けた国の対応が更に強化されてくるでしょう。事業の見通しが立っていない、権利のみ押さえている案件が未だ多数ありますが、そのうち30GW位は失効されるのではと見ています。それにより、新たな接続可能容量が確保できてくるでしょう。



※グリッドパリティ:再生可能エネルギーの発電コストが、「普通に電気を買うのと同じ」か、「普通に電気を買うより安い」状態になること。

(澁谷)

未稼働の設備の認可が失効することで、より多くの太陽光電力が生産可能になるのですね。太陽光電力の買取価格は下がっていると先程おっしゃいましたが、そのあたりはいかがでしょうか。

(恩田社長)

金融機関から「太陽光はもう終わったのでは」といった質問をよく頂くのですが、決してそんなことはありません。普及の仕方が変わっていくということです。太陽光発電の普及は止まるわけではなく、2030年のエネルギーミックスで示されている再生可能エネルギーの導入水準22%から24%達成に向けて、継続的に普及していくとみています。現時点での発電電力量に占める割合は12%位で、水力を除くと未だ3%位です。これまでの売電による安定収益の確保・優遇税制の活用を目的とした導入だけでなく、太陽光マーケットのコモディティ化が進み、今後は自家消費を目的とした屋根設置型の太陽光の導入が増えていくと思われます。

ここ数年産業用が注目されてきましたが、ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)をうたった商品投入など、新築・既築住宅市場での活動が活発になってきています。

(澁谷)

ネット・ゼロ・エネルギーハウスについてもう少し教えていただけますか。

(恩田社長)

そうですね。国や自治体がエネルギーの自給率を高めようとしていると同じように、ご家庭においてエネルギーの自給自足をおこなっていく、そうできるようにするための家といったイメージでしょうか。住宅の断熱性や省エネ性能をあげて、空調や照明、給湯などで消費されるエネルギーの量を減らす、さらに太陽光発電を使ってエネルギーを創れるようにする。そうすることで、ご家庭で消費されるエネルギー量の年間の収支をプラスマイナスゼロにする。そんな家づくりです。このZEHには補助金が交付されますので、補助金を受けてこのZEH仕様の住宅にするお客様も増えていますね。

今までは、節税目的これからは、純投資目的

(澁谷)

貴社はメガソーラーを180 ヵ所以上販売されていますが、お客様は節税対策と投資、どちらの目的が多いのでしょう。

(恩田社長)

これまでは、メガソーラーを購入いただいたお客様の9割以上が節税対策を目的としていました。メガソーラーの現物販売以外に、当社のグループ会社で太陽光ファンドを3 回組成しましたが、早期に販売終了となったことからも投資ニーズの高さを実感しています。今後は、太陽光を投資、運用商品といった側面でとらえた事業機会が我々のような事業者だけでなく、金融機関にも出てくると思われます。金融機関が、太陽光発電事業に投資するファンドに出資したり、東京証券取引所がインフラファンド市場を開設するなど、太陽光が金融という側面でも改めてクローズアップされてきています。インフラファンドに組み入れるアセットは太陽光だけではありませんが、投資家が新たな投資先として高い関心をもつようになるでしょう。太陽光発電事業者や投資家は、上場市場という新たな出口が出来ますし、不動産REIT同様に、個人投資家にインフラ投資の手段が提供されることにより、投資家の裾野の拡大にもつながっていきます。

太陽光は、終焉に向かっているわけでなく、普及の仕方が変わってくるという新たなステージに入ったのだと思います。エネルギーの地産地消、再エネを活用した自治体の地方創生といった取り組みもその一例です。

(澁谷)

最近、ヤフーオークションにメガソーラーを出品されたと伺いましたが。

(恩田社長)

はい、当社の最近のトピックスの1つです。従来は、提携先金融機関や会計事務所からご紹介いただいたお客様への相対販売が中心でしたが、昨年から、当社主催のメガソーラーオークションでも販売しています。入札期間を設けて、期間中最も高い金額をご提示いただいたお客様に販売する方法です。既に3回22物件合計11 メガ分のメガソーラーをこの方法で販売し、ご購入いただきましたが、更に幅広く企業様、投資家様に当社メガソーラーをご購入いただきたく、ヤフーオークションに出品させていただきました。メガソーラーの出品は日本で初めてとの事でしたが、お陰様でこちらもオークション初日に落札いただきました。中古の発電所売買の日本でのプラットフォームが整備されていませんので、このような場を提供していきたいと思っています。

自治体が電力会社をもつ時代に

(澁谷)

貴社は、地方自治体との取り組みも積極的ですね。

(恩田社長)

そうですね。現在協定を結んでいる自治体は85ヵ所を超えました。当社はまず自治体から屋根や公有地をお借りして太陽光発電事業を実施します。売電収入の一部を屋根使用料としてお支払することで自治体は新たな税収を得ることが出来ます。設置する施設には蓄電池を設置するケースもあり、その場合は災害時の電源確保が出来ますので、住民サービスの向上にもつながります。自治体との協定を積極的に行い、各地域におけるエネルギー事業を通じて地域サービスの一役を担えるようになりたいと思っています。

(澁谷)

地方創生にもつながっていく取り組みですね。

(恩田社長)

おっしゃる通りです。さきほどご家庭におけるエネルギー自給自足の話をいたしましたが、これもエネルギー地産地消の街づくりの一環です。再生可能エネルギーは、地域におけるエネルギー自給率向上にむけて欠かせない分散型電源ですので、地域のエネルギー資源を活用した地方創生の取り組みは各地域において今後も続いていくと思われます。電力自由化によって自治体が「新電力会社を持ち、地域の再エネでつくられた電気を買取り、地域に販売するといったエネルギーの地産地消をすること」が可能になりました。自治体が電力会社をつくるなど10年、20年前など想像できなかったのではないでしょうか。既にいくつかの自治体が取り組み始めています。

(澁谷)

具体的にはどんな事例がありますか。

(恩田社長)

先日、宇部市より、宇部市が設立する新電力会社の設立、運営のアドバイザー業務をグループ会社であるウエスト電力が受託させていただきました。地域電力会社のメリットは、富が地域内に循環することです。事業者、住民が県外の一般電気事業者に払っていた電気代を地元電力会社に支払うことで、お金が地元に落ちることになります。地元新電力会社は、電気を地元に販売することで収益を得られますので、その収益を住民サービスに活用することが可能になります。

エネルギーを活用して地元に新たな雇用をつくり出し、お金が循環し、地域経済を活性化させる。ドイツではシュタットベルケという公社のような組織がその役割を担っています。発電所を運用し、電力を販売するだけでなく、地域に密着してガスや熱の供給や医療、介護などのサービスまでおこなっています。ドイツでは、このシュタットベルケが900社以上あり、ドイツの電力小売りの2 割を販売しています。当社は、このモデルを参考に日本型シュタットベルケの展開を自治体様、金融機関様と協力しながら進めています。

省エネサービス「ウエストエスコ」

(澁谷)

自治体との取り組みについて教えてください。

(恩田社長)

はい。当社とおつきあいのある自治体の悩みに、設備の更新があります。築年数が経過し、建物設備の老朽化が進み、15年~20年前に設置したや空調や蛍光灯を使用し続けているところも多くあります。電気代削減のために、省エネ効果のあるLED や最新の空調に変えたいと思っても更新の予算が無かったり、景観上の理由により街路灯を水銀灯からLEDに変えたいが、予算が無くて困っている自治体が多いのも事実です。

今回、萩市の市照明都市委員会というところと街路灯をLEDに替える協定を結びましたが、当社が新たにサービスを開始している「ウエストエスコ」というサービスを評価いただき、受託させて頂きました。通常、LEDに交換する費用は自治体等の機器所有者負担となりますが、機器の交換費用はすべて当社が負担するというサービスです。お支払完了後は、機器を無償譲渡するという一種のレンタルサービスです。レンタルですので、リースと違い、サービス期間中の機器の保証も入っています。自治体は初期費用をかけず、蛍光灯・水銀灯をLED に切り替えることで大幅に削減される電気代を原資として、一定期間にわたって交換費用を当社にお支払いただくため、今まで電力会社に払ってきた電気代の中から交換費用を支払うことができます。設備更新はしたいけど、予算がない自治体様から多くのひきあいを頂いています。

電気代ダブル削減プラン

(澁谷)

このサービスは自治体以外にも広げられるのではないですか。

(恩田社長)

「ウエストエスコ」は実は企業様のニーズが非常に高く、サービス開始以降多くのご契約をいただいています。多くの新電力会社がこの基本料金引き下げに本業のサービスを加えたセットプランでの営業を展開していますが、先ほど お話しましたとおり、当社グループはウエスト電力という新電力会社をもっており「ウエストエスコ」という省エネ機器のレンタルサービスを活用した電気代のダブル削減サービスを提供しています。①ウエスト電力への切り替えで基本料金を安くし、②省エネ効果の高い照明、空調設備に費用負担なく更新することで、日々使用する電気代を安くする。この2つのダブル削減アプローチで「電気代を10%近く削減しましょう」といった提案をしています。

(澁谷)

省エネ設備へ更新する資金的余裕のない中小企業などに喜ばれそうですね。

(恩田社長)

そうなんです。省エネ設備への投資は、更新すれば電気代削減などのメリットがあることはわかっていても、その更新費用の負担が重く、どうしても優先順位が下がってしまいがちです。資金が潤沢にある会社は自己資金で行いま すが、それができない企業が非常に多いのです。また介護施設やホテルなどで省エネ設備への更新によるコスト削減ニーズはあるが、「金融機関からの与信枠は省エネ設備の更新で使いたくない」「生産設備や出店費用など収益向上につながる投資に使いたい」という経営者の方も多くいらっしゃいます。当社は、リース会社と組まず当社の資金でおこないますので、お客様は当社との直接契約で済みます。審査に時間がかかったり、複数業者と契約するといった煩わしさがないといったこともメリットの1つです。何より、「資金が無くても最新の省エネ設備に更新でき、電気代が10%前後削減できるようになる」というのが最大のメリットです。これまでの事例では年間電気代が1,000万前後かかっている企業にはかなりの削減効果が出ています。お陰様で、提携先金融機関様から太陽光に加えて、こちらの商品のビジネスマッチング契約もさせて頂いています。

(澁谷)

まさにエネルギーソリューションカンパニーですね。

(恩田社長)

はい、当社は、今まで太陽光を中心に事業を展開してきましたが、新電力による電気の販売、「ウエストエスコサービス」といった省エネ事業を含め、総合エネルギーマネジメント企業に向けた事業展開を図っています。創エネ、蓄 エネ、省エネといったエネルギーのソリューションサービスを活用して地域創生のお手伝いをし、その結果としてCO2削減による社会貢献を図りたいと思っています。

(2016/04/01 掲載)

恩田 英久(おんだ ひでひさ)
平成24年3月より代表取締役社長(現職)。
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境MOT プログラム 地球温暖化対策 再生可能エネルギー担当講師
●お問い合わせ:株式会社ウエストエネルギーソリューション 事業開発部 齊藤 TEL:03-5353-6868