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第12回 株式会社ファーマーフーズ 代表取締役社長 金武祚(キム ムジョウ)氏「みんなにやさしいバイオの夢 〜医薬と食の融合〜」

▲ 株式会社ファーマーフーズ
代表取締役社長 金武祚氏

株式会社ファーマフーズ(マザーズ:2929)は、卵や緑茶など、身近な食品から得られる安全で安心なバイオ素材を開発する京都発のバイオベンチャーです。
特に鶏卵抗体、ギャバ、カテキン、α−リポ酸等の機能性食品素材の研究開発を得意としています。「医薬」(Pharmaceutical)と「食」(Foods)の融合を目指すことから社名を「ファーマフーズ」(PharmaFoods)と名づけ、生命活動と健康維持に重要な「免疫・老化・神経」という3つの要素に作用する製品の開発を進め、平成18年6月に東証マザーズに上場を果たした注目企業です。
より一層の積極的な事業展開をすすめている金社長に、製品開発や銀行への期待についてリッキービジネスソリューション澁谷耕一がお話を伺いました。

バイオをやさしく身近に
(澁谷)
1997年の創業から9年経ちますが、創業しようと思われた契機はなんですか。
(金社長)
10年程食品素材を扱う上場会社の役員として、研究所の所長をしていました。マネージメントが嫌いということではありませんでしたが、それよりもフィールドを大きくしてクリエイティブな仕事を研究人としてやりたい、より自由度が欲しいという動機から今の仕事を始めました。また、バイオベンチャーは当時アメリカで注目されており、その活発な活動にも触発されました。
ただ、お金も人もない状態からのスタートで苦労しました。ベンチャーといってもITのベンチャーとは違い、バイオにはハンディがあります。抽出したり濃縮したり、カスを捨てたりするために、水道、ガス、電気、スペースが必要で、なかなか施設を借りることができませんでした。その中で決心したのは、正月もお盆も10年間1日も休まないということです。時間だけはみんな平等にありますので、やりたいという勇気のある人なら時間は2倍にも3倍にも絞り出せると思いました。
食という字は人を良くすると書きます。食を単においしさや栄養学だけでなく、人を良くするという観点から、免疫と老化と神経について深掘りをすれば世の中に役立つことができると思いました。これが今で言う機能性食品というジャンルです。
会社名は、医薬品にしても十分な食品を扱う余力のあるビジネスをやりたいと思い、医薬のファーマシーと食のフーズから「ファーマフーズ」としました。

▲ ギャバを使った機能性食品
私共は、バイオをもっと身近で分かりやすいものとして「やさしいバイオ」を会社理念にしています。例えば神経について、ギャバというアミノ酸の一種は心を落ち着かせる作用があるというデータを取り学会に発表しました。
実験では、被験者に奈良県にある谷瀬のつり橋という高さ55メートル、長さ300メートルのつり橋を渡ってもらいました。橋の下は谷底になっていて、非常に恐怖感があります。ギャバを摂取した場合とそうでない場合で恐怖感に差があるかどうか比較しました。このようにやさしく説明することで、多くの方々に支持をしていただくことができました。
(澁谷)
鶏卵抗体について教えて下さい。
(金社長)
悪い病原体を動物に接種すると、動物は体を守るために血液中に抗体を作ります。これを抗原抗体反応つまり免疫と言いますが、鳥類では免疫により産生された抗体が卵黄中に移行するという特徴があります。この鳥類特有の免疫システムを利用し、広く実用化を紹介しているのが私共です。同じ抗体を産生するといっても血液を食べる習慣はありません。反対に、たまごは唯一、宗教や民族を超えて世界中で食べられています。また、鶏はほぼ毎日卵を産み落とすことができることから、鶏卵が経済性・生産性の高い、たんぱく供給源となっています。鶏卵抗体は、誰でもできるのに誰もやらない常識の盲点であると考えています。
このメカニズムを活用し、食品分野では、胃潰瘍の原因菌であるピロリ菌に対する鶏卵抗体を開発し、主にヨーグルト用途に発売、日本、台湾、中国、韓国で採用されています。
化成品分野では、インフルエンザウィルスを認識し捕捉することのできる鶏卵抗体を開発し、ダイキン工業のフラッシュストリーマや資生堂のウィルスカットマスクに採用されるなど、その応用範囲が拡大しています。そういった意味で、世界中がこの技術に注目していると考えています。
3年程前から、もう少し社会性を帯びた会社になりたいと思い、株式上場を考えました。上場経験のある人が1人もいませんでしたが、全部自分たちで手続きをしました。
上場してこれからの3年間が私共の第2次創生であるといっています。現在、機能性食品素材を基盤収益としていますが、遺伝子組 み換えやプロテインエンジニアリングといったバイオテクノロジーを活用し、検査薬・医療食・メディカルデバイス製品などの次世代製品の研究開発もすすめています。現在の基盤事業とともに将来のための研究開発をすすめるという両輪が実践できないと、企業としての永続性がなくなると考えています。
私共は研究開発型のバイオベンチャーであると自負しており、上場により調達した資金を、研究開発事業に投資していきます。2年後には役職員を100名体制にすると宣言しています。マルチカルチャーという新しい価値観で、ITや通訳をやっていた人など様々なキャリアの人を採用し、ノルウェーやエジプト、中国、台湾、韓国など様々な国の方から知恵を授かっています。
 
銀行からの融資で広がったビジネスチャンス
(澁谷)
銀行とのおつきあいはいかがでしたか。
(金社長)
創業してしばらくは、銀行に出すビジネスモデルが出来ていませんでした。事業計画を一生懸命書き、京都銀行に1億円程融資をしていただきました。製品が採用されるかどうかという時でしたので京都銀行の判断はすごいと思いました。1億円は大金でしたから、融資していただいた資金をいろいろなことにあてがうことでチャンスを広げることができました。ですから私は京都銀行には本当に感謝しています。
(澁谷)
それ以降、京都銀行との関係はいかがですか。
(金社長)
京都銀行も地元を育てようとしていまして、宣伝の中で長い付き合いをとありますが、それに真実味を実感しました。取引をしている支店の支店長が代わってもその姿勢は全く変わっていません。先日頭取にお会いしましたが、論点がシャープで、かつ、大変気さくな素晴らしい方でした。今までお世話になった京都銀行の期待にも副えるよう、頑張って事業をすすめたいと思っています。
海外での積極的な営業展開

▲ ファーマーフーズ京都本社
(澁谷)
今後の展開について教えて下さい。
(金社長)
今期上場いたしまして、今後3年間を第2次創生として事業展開をすすめていこうと思っています。
営業では、海外営業展開をさらに積極的に行うことを最大の命題として掲げています。従来から韓国やタイにはすでにマーケットができていますが、アメリカ等新しい市場を積極的に開拓していこうと2年ほど前から準備にとりかかりました。アメリカでは、ラスベガスとアナハイムで開催されている展示会に、三菱商事と共同でブースを出展し、アメリカのマーケットへのアプローチを始めました。
また、カナダには、サプリメントの原料として既に製品を供給しています。カナダのマーケットをふまえて、アメリカ市場で飲料や食品に対してアプローチをかけていこうと考えています。アメリカでの事業を今期中に立ち上げたいと思っています。
中国については、一部ヨーグルトで採用されていますが、まだテストマーケティングの段階です。中国には人口が13億人いる中で貧富の格差もありますが、北京や上海のマーケットは将来日本と同じくらいの規模になるでしょう。生活水準も日本と差がなくなってきており、年収が1000万円くらいありベンツなどの高級車に乗っている人も増えてきています。そういう消費者層や地域を一つの国として考えれば、十分大きなマーケットがあると思っています。北京でのオリンピック開催で、経済が急激に伸びる段階に合わせて私共のビジネスプランも成就すると考えています。
(澁谷)
京都には御社や京セラさんなどユニークで独創的なすばらしいベンチャーが生まれていますが、なぜでしょうか。
(金社長)
自由度や意識の高さがあるかもしれません。温故知新という言葉がありますが、清水焼のように当時の先端の技術が潜伏期間を経て今出てくることがあります。私共の発酵技術についても、漬物、味噌、お酒といった技術のベースがあって、それが温故知新的にでてきました。また、もともと都があった大学の町で研究施設が充実していましたし、懐の深さもありました。京都では京都の人を大切にしてくれるし一緒に頑張ろうという思いがあるのではないでしょうか。
これからの地域金融機関の役割
(澁谷)
今後銀行にどういう期待をされますか。
(金社長)
僕は銀行に出会いの場を作ってもらいたいと思っています。もちろん、資金調達としても重要ですが、今後は企業にお金を貸し付けることだけでなく、企業自体を大きくしていくようなお手伝いをしていただきたいです。例えば、銀行という大きなネットワークの中で情報・知恵や取引先などをご紹介していただくことが、地域金融機関の役割になっていくのではないかと思います。会社の成長に合った、必要資金を調達するという関係と、それ以上にビジネス展開という意味での協力関係を築いていけたらと思います。
-会社情報-
社 名: 株式会社ファーマーフーズ(Pharma Foods International Co., Ltd.)
事業内容: 機能性食品素材の開発・販売
本 社: 京都府京都市西京区御陵大原1−49
設 立: 平成9年9月12日
資本金: 1,556百万円 (2006年7月末現在)
上場市場: 東証マザーズ(マザーズ:2929)
売上高: 1,200百万円 (2006年7月期)
社員数: 60名 (2006年7月末現在)
URL: http://www.pharmafoods.co.jp/
2006/10/19 取材)|(2007/01/19 掲載)
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