
▲ 株式会社富士セラミックス
代表取締役 清治満氏
2005年4月に創立30周年を迎えた株式会社富士セラミックスは、当時はまだ知る人の少ない圧電セラミックスを主力商品に、大手企業から独立分離して生まれました。圧電セラミックスは、電子ライターや超音波加湿器からミサイル部品まで幅広い用途を持つ注目の素材です。
当社は「技術で社会に貢献する」を経営理念に、顧客ニーズに応えるべく次々と新たな分野にチャレンジをしています。当社の製品は、電子ライター用着火素子、加速度センサーなど多くの応用分野で国内外トップシェアを誇っています。
創業経営者である清治社長に、顧客ニーズが生む企業価値や、創業時の銀行との秘話、銀行に期待することなどについてリッキービジネスソリューション澁谷耕一がお話を伺いました。
(澁谷)
創業の経緯についてお聞かせください。
(清治社長)
1975年4月、医療機器製造の現在のテルモ(株)から20人の仲間、部下とともに分離独立して当社を設立しました。私はテルモ入社後、電気技術をベースとした設備検討、商品開発等の業務に携わっていました。ところがテルモが医療分野専門メーカーとして本業回帰に大きく舵をとる中で、圧電部門の撤退を余儀なくされました。その時、圧電セラミックスの可能性を信じていた私は、独立に踏み切ったのです。多くの借金を抱え、仮工場でのスタートでした。
創業から5年経って、現在の本社工場を建てました。平成17年に白糸の新工場が完成し、現在工場は5箇所あります。全て借金コンクリートですけれども。(笑)
(澁谷)
主力製品の圧電セラミックスについて教えてください。
(清治社長)
圧電セラミックスを叩いたりして圧力を加えると、瞬間的に高電圧が発生します。逆に、電圧をかけると、素材自体が薄くなったり厚くなったり伸び縮みします。このような電気エネルギーと機械エネルギーを変換する働きをもった素材が圧電セラミックスです。戦時中、潜水艦のソナーを作る部品として開発された素材と言われています。
(澁谷)
どのような用途、製品分野に使われているのでしょう。
(清治社長)
身近なところでは、電子ライターの着火装置に使われています。力を加えると高電圧、火花が発生する作用を利用しています。電子ライター用の部品として、世界シェアは50%近くあります。フランスのBIC社などでも使われており、およそ月間1,000万個ほど生産しています。これが電子ライターを分解した見本ですが、この中に「ELEMENT」と書かれているものが圧電セラミックス部品です。直径2.5ミリ、高さ5ミリの大きさです。これをバネの力を使ってハンマーで叩いて電気的なスパークを発生させ、そこにガスを吹き付けて着火させます。瞬間的に、1万5千ボルト近い電圧が発生しますので、指で直接触りながらカチッと押してみると、一瞬ビリッとしますよ。直流電圧ですから体に害はありません。
それと、胎児の心拍計にも圧電セラミックスは使われています。胎児の鼓動、振動を拾って電気信号に変えて、音として聞こえるように電気処理をするわけです。私も実際に妊婦さんの診断に立ち会ったことがあります。その時のお母さんは、「私の赤ちゃんの音を聞くことができた」と涙を流していらっしゃいましたね。
(澁谷)
私たちの身の回りに、これほど御社の製品が使われていたとは驚きです。
(清治社長)
他にも、女性に馴染みの深いところでは超音波を使った美顔器にも当社の製品が使われています。メガネクリーナーや加湿器の超音波発生器もそうです。国内各大手の医療用の超音波診断装置の先端にも当社の製品は入っています。また、新幹線のレールなどの非破壊検査用の製品としても使われています。検査超音波を発生させ、そのエコーを捉えて亀裂などを診断するのです。
その他、加速度センサというものがあります。今、日本で作っているセンサのおよそ60%が当社の製品です。大手製鉄会社の圧延ローラーのベアリング部品にも使われています。ベアリングは磨耗すると、超音波の微細な振動が出ます。その振動をキャッチするのがこの加速度センサで、特に自動車鋼板のように品質に厳しく、均一な厚みを必要とする鋼板製造には欠かせないものとなっています。
(澁谷)
少量多品種、応用分野は限りないのですね。
(清治社長)
顧客の求めに応え、色んな分野にチャレンジしてきた結果です。一つの課題に応えると、それでは次はこんなのができないかと、どんどん要望が増えてきます。商品は、値段だけで勝負するのでなく、お客様から、値段は高いけれど、この商品でなかったら困ると言っていただけるのが顧客満足度で、そうした商品をどのくらい持てるかが、企業の存在価値です。
そのために、当社は素材の開発から生産技術、製造技能、販売、品質保証まで、全て一貫してやっています。開発費用は毎年、売上高の7%から10%になります。この費用を計上する為には、相応に利益率の高い商品でないといけません。そしてそれは、我々が明日生きるための大変な要素になるのです。
(澁谷)
圧電セラミックス製造の難しさはどのようなところにあるのでしょうか。
(清治社長)
酸化チタンとジルコニアと酸化鉛の三つが主力材料です。それに十何種類の素材を入れて特性を出します。その材料を活かすための調合プロセス、焼成技術はお互いに相関関係があり、全てが一連のノウハウです。それがこの商品のやっかいさで、そう簡単にはいかない要素ですね。ですから、事業継承、技能と技術の継承は大きな問題です。当然、人材育成も重要な条件です。
(澁谷)
創業直後は資金不足に悩まされていたとのことですが、30年の御社の歴史の中で、銀行とはどのようなお付き合いをされてきたのでしょうか。
(清治社長)
創業来30年間ずっと、静岡銀行富士宮支店とお取引があります。もう十何人の支店長が代わっていますけれど、歴代支店長のお顔、性格等、一人一人思い浮かびます。最初のころは、どこの馬の骨か分からないみたいな顔をされたこともありましたが、当社の地道なもの造りの姿勢と取引振りを評価してくれたのか、最近はようやくこちらを向いてくれるようになりました。(笑)
創業問もない頃、銀行の担当者の方に「御社が割引に持ってくる手形は、何でそんなにいい銘柄ばかりなのですか」と聞かれたことがありました。ですが、それは当社の業務について銀行がよく調べてなかったからですね。当社は、専門性が高い製品を作っていますので、資本金1,000万円、30人か50人の会社であっても、集金してくる手形は1部上場の会社が多かったのです。
設備資金の借入もよくしました。最初のころは当社の信用が無かったためか、融資の相談をすると、銀行はあらゆる調査を掛けていたようです。後で分かりましたけれど。(笑)
(澁谷)
ご創業以来、静岡銀行さんをメイン銀行に位置づけて大事にされているのですね。

▲ 株式会社富士セラミックス本社
(清治社長)
ええ。商品は変化しなければいけないけれども、変化してはいけないものもあるわけですよね。不易流行という言葉があるでしょう。特に信頼関係を築き上げてきた金融機関との取引については、そういうことが大事な要素だと思います。それから、例えば給与日とか、期末などに定期的に銀行を訪問する事も必要だと思います。
工場を造る計画構想などは、半年以上前から、設備の目的やスケール、資金計画について銀行に話をするようにしています。そうした説明を通じて信頼関係を築いていくことが大切なのです。
(澁谷)
今後、静岡銀行に期待することや要望などについてお聞かせください。
(清治社長)
銀行は一般に、従来の習慣で数字だけ見ていますよね。ところが、会社というのは生き物ですから、お金も必要ですけど、大事な要素はもっと他にもあると思います。企業の商品とか、経営の形態とかトップの考え方などがあって、それプラスお金の問題になるのです。これは静岡銀行に限らず、金融機関が考えておかないといけない要素ではないかと思っています。
数字を見て、例えば財務諸表を見て計算して、それで済むなら簡単だと思います。ところが取引先は業種によって、商品とやり方とマーケットと品質など、あらゆる面が違います。それをトータルしてどう診断するかという知識と勉強が必要なのではないでしょうか。
(澁谷)
銀行の顧客満足度向上についてはどのようにお考えでしょうか。
(清治社長)
経営者の相談相手といった、コンサルティング業務が大切だと思います。銀行も基本はサービス業ですからね。コンサルタントになる為にはものすごく勉強をしなければいけませんが、それが取引先から信頼される大事な要素だと思います。
経営、企業というものは、特にメーカーでは切り口がたくさんあります。商品、業務管理、品質管理、製造や技術など全部含まれているものが企業です。銀行員にそれだけ幅広いものを求めるのは難しいのかもしれませんが、その中で銀行がやれるところを選択していくことが大切だと思います。例えば、その企業に必要な人材のスカウトなども一つの方法だと思います。
もちろん銀行が得意な、財務という切り口もあります。つまり、その会社にとって一番必要な切り口は何かを判断することです。そうすればお客様は喜んでくれるでしょう。
-会社情報-
| 社 名: | 株式会社富士セラミックス |
|---|---|
| 本 社: | 静岡県富士宮市山宮2320番地11 |
| 設 立: | 昭和50年4月21日 |
| 資本金: | 4,500万円 | 社員数: | 200名 |
| 事業内容: | (1) 圧電セラミックスをベースとした強誘電体など、エレクトロ・セラミックス素材の製造販売 (2)振動・衝撃・音響・超音波その他各種セラミックス・センサ製造販売 (3)微動変位各種アクチュエーター素子の製造販売 (4)その他、エレクトロ・セラミックスの応用デバイス・機器の製造販売 |
| URL: | http://www.fujicera.co.jp/ |
(2006/01/22 取材)|(2007/03/07 掲載)





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