業界事情
第14回 株式会社みすずコーポレーション 代表取締役社長 塚田裕一氏「自然のめぐみを生かし便利で豊かな食生活を創造する」

▲ 株式会社みすずコーポレーション
代表取締役社長 塚田裕一氏

株式会社みすずコーポレーションは、長野市に本社を置き、「みすず豆腐」をはじめとする凍り豆腐(高野豆腐)や油揚げ、おからなどの大豆加工食品の製造販売を手掛け、今年で創業105年目を迎える。凍り豆腐を食べやすいようにサイコロ状にカットしたり、油揚げに味を付けて販売する等、変化する消費者のニーズに応じて創意工夫した製品を次々と生み出してきた。環境事業にも力を入れており、ゼロエミッションを掲げ、製造時に出る、おからや廃油などを再資源として利用している。
4代目の塚田裕一社長に、伝統的な大豆製品を継承する使命感や環境に対する取り組み、銀行に期待することについてお話を伺った。

(澁谷)
会社の沿革と製品について教えてください。
(塚田社長)
高野豆腐は、平安時代からの伝統食品です。産地は北海道から九州まで日本全国にあり、農家で農業ができない冬の期間に副業として作られていました。
初代が、明治35年長野県上水内郡古牧村に、「古牧園」という高野豆腐の組合を作り、冬の期間だけ高野豆腐を製造していました。昭和4年、「古牧園」の2代目が、アンモニアによる膨軟加工処理の画期的な発明をしまして、日持ちのする、柔らかく、調理が簡便な高野豆腐の製造に成功し、「みすず豆腐」とネーミングして全国に発売しました。これによって、冬の期間だけでなく一年中高野豆腐を作るようになりました。製造方法の特許は取らずメーカーと一緒に作ってきたことで、長野県は高野豆腐の産地になり現在ではそのほぼ100%を長野県で作っています。

▲ 左からレンジで調理できる高野豆腐、
おいなりさん用味付け油揚げ。
高野豆腐は、昭和50年ぐらいまで需要が伸びていましたが、昭和53年をピークに成熟市場になりました。この時、納豆やそば、油揚げの製造を開始しましたがなかなか売上は伸びず、試行錯誤で生揚げに味を付けて加工したきつねうどんの揚げを製造したところ、大阪方面の消費者に受け入れられスーパーに製品が並ぶようになりました。昭和60年には、いなりずし用の油揚げを作り、これも生産が間に合わない状況が続き、油揚げの売上は高野豆腐を上回るまでになりました。その後、マーケットの大きい業務用に特化しようと平成8年に油揚げ専門の工場を造りました。油揚げにご飯を入れるとき、油揚げが開きやすく破けないという条件を満たしたものを作るには技術がいります。10年ほど試行錯誤を繰り返し納得できるものができました。このいなりずし用油揚げ専門の工場を作ったことを契機に売上は大幅に上昇し、現在の売上の7割は油揚げ関連商品で、残りの3割が高野豆腐です。
豆腐や、油揚げのメーカーは、5年前は全国に約8,000社あったのが、今では約3,000社まで減少しました。その中で、味付けの油揚げの売上が20億円以上の会社は3社しかありません。油揚げは、技術的にも難しく、ロスが出てしまうため寡占化されている業種なのです。油の処理には、環境に配慮した排水処理の設備が必要ですが、それには資金が必要である程度の規模を追究しないと難しいという点もあります。
こういう状況ですが、日本の伝統食品である油揚げはなくてはならないと思いますし、我々は作り続けるべき使命があると考えています。便利な形でいかに提供するかが今後の課題です。

▲ 排水処理設備
(澁谷)
御社の強みとPRのポイントについて教えてください。
(塚田社長)
高野豆腐は、濃度の濃い豆腐を作って、冷凍させます。膨軟処理をして2週間程冷蔵庫に入れた後、乾燥機に掛けるという、非常に手間の掛かる工程を経ます。冷凍、凍結変性、乾燥、熟成といういろいろなノウハウが集約された商品なのです。そういう意味で、高野豆腐屋は大豆タンパクの取り扱いには様々なノウハウを持っているため、技術的に高い商品を作ることができることが強みです。
また、原料から製品まで一貫して作って消費者のお手元まで届けていますが、これはメーカーとしてのあるべき姿だと思っていますし弊社の強みだと思います。
(澁谷)
環境への取組みについて教えてください。
(塚田社長)
地球と環境に優しい企業を目指し、環境報告書を作りました。他企業に先駆けてゼロエミッションとして、廃水処理をするときに出てくるバイオガスを取り出してメタン発酵させたものを使い、再利用しています。メタン発酵による残渣の処理や廃水処理は、おからを100%還元しているので、捨てているものはありません。弊社の生おからの排出量は、平成17年度で1万5,000トンを超えました。廃油や油揚げでも大量の油を使っていますが、おからも油も全て再利用しています。
先代が環境には非常に配慮していましたので、多額の投資をした結果、同じ工場で生産性は1.5倍にまでなりました。食品メーカーも環境対応型でなければいけないというのは間違いありません。パッケージもなるべく簡便なものにしています。
(澁谷)
新製品、新規事業について教えてください。
(塚田社長)
日本人が食べる大豆食品は生豆腐か納豆、大豆製品では高野豆腐か油揚げと非常に画一的ですが、アメリカでは大豆を使った豆腐のチーズやドレッシングなどたくさんの種類の製品があります。こういった製品をヒントに新製品を開発したいと考えています。
また、中国に安達有限公司という、東海澱粉、安達、みすずが共同経営する会社を作りました。安達有限公司では、日本と同じ油揚げの機械を使っていまして、中国国内での油揚げの生産技術、生産量はともにトップになりました。
 
(澁谷)
今後の課題について教えてください。
(塚田社長)
油揚げについては、業務用の生産と販売体制を確立させることが課題です。顧客のニーズが絶えず変化している中で、そのニーズに対応できる営業体制を組む必要があると思っています。業務用として機械を使って大量生産をしていかなければいけない一方で、手づくりでいかに温かみのある商品を出すかということも今後の課題です。今、量販店では、お総菜に力を入れており、お惣菜の差別化が店の競争力になると考えられています。我々は供給側として、量販店が競争に勝つために求める手づくり感のある商品を作らなければなりません。手づくりを機械でできないということはなく、手作りと機械が融合することで、この商売自体がうまくいくと考えています。
高野豆腐については、伝統食品として今後どのような形でお客さまに販売していくかが課題です。少子高齢化の問題もありますし、例えば電子レンジで作れる高野豆腐など簡単に調理できるものを開発したり、学校給食へ紹介するなどしっかりと啓蒙していきたいと思っています。
(澁谷)
八十二銀行とはどのようにお付き合いをされてきましたか。
(塚田社長)
八十二銀行さんとは100年近くお付き合いをさせていただいています。今会長をしている私の父が昭和33年に新会社をつくるとき、当時の小林頭取に大変お世話になりました。その後もバックアップをしてくださり100年間苦労を共にし、本当に感謝していると言っています。昭和60年に、工場を続けて3つ建てることになり、早く償却をして生産ラインを次々に作らなければ間に合わないという状態が続きましたが、この時も財務面では大変お世話になりました。現在私が作りたいもう一つの油揚げの工場についても前向きにご検討いただいていて、今後もいい意味でのお付き合いをしていきたいと思っています。
また、銀行には全国にお客様がいらっしゃるかと思います。我々は、地域の情報だけでなく、長野県外の情報も必要で、ぜひ情報面でもバックアップしていただきたいです。また、食品業界は小さく人脈は非常に重要です。今まで、横のつながりは自ら作ってきたのですが、銀行に紹介していただくと、非常に入り込みやすく飛び込みで行くよりも決定率がずっと高いです。こういったビジネスマッチングの機会は私達の営業に非常にプラスになるありがたいことです。また、国内市場が縮小していく中で海外進出も考えているため、こういった時のフォローもお願いしたいと思っています。
(澁谷)
銀行のもつ情報やネットワークを企業の成長、発展のために提供してほしいということですね。今日は長時間ありがとうございました。
-会社情報-
社 名: 株式会社みすずコーポレーション
本 社: 長野県長野市若里1606
設 立: 昭和24年4月21日
資本金: 7,000万円 (2006年7月末現在)
売上高: 年商85億円 (2006年3月期)
社員数: 412名
URL: http://www.misuzu-co.co.jp/
2007/03/15 取材)|(2007/09/05 掲載)
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