頭取に就任してこの6月で満10年になりますが、私は「銀行経営の近代化」に終始一貫して取り組んできました。
「銀行経営の近代化」の一つ目の柱は、リスク管理について、「自分たちの城は自分たちで守る」という信念の下、自己責任経営の根幹を成す「バーゼルII」を是が非でもクリアするということです。しかも、「標準的手法」(通称「SA」)でなく、よりハードルの高い「基礎的内部格付手法」(通称「FIRB」)に挑戦し、このたび地銀トップ5行のなかに合格しました。
二つ目は徹底した「ITの活用」です。銀行内での事務の効率化はもちろんのこと、お客さまのニーズにマッチした新商品・サービスの開発など、内外両面でITは大いに活用していく必要があります。この2つの柱を根幹に「銀行経営の近代化」を実現する、という信念のもと10年間経営をしてきました。
[2007/05/15] 滋賀銀行のCSRへの取り組み
近江商人の三方よしの哲学に基づき、経営理念の根本に「CSR」を位置づける滋賀銀行田頭取に、CSRへの取組みについてお話を伺いました。
聞き手:リッキービジネスソリューション(株)澁谷耕一

▲ 滋賀銀行 田紘一 頭取
(田頭取)
そして、忘れてならないのは「CSR(企業の社会的責任)」です。銀行は社会的な存在であり、特に我々は地域社会に根差す地方銀行として、地域社会と連携しながら、当行自身が新しい時代の価値観、ビジョン、生き方、経営の在り方などあらゆる観点から、信ずるところを堂々と主張し、具体的なアクションに反映させていくことが、ひいては地域社会の健全な発展につながると考えています。
地域社会と地方銀行は、「地域社会が健全であれば、地方銀行も健全である」と同時に、「我々地方銀行が健全なメッセージと価値観を具体的な行動で地域社会にぶつけることで、地域社会は健全になる」と考えています。両者が「Win−Win」の関係にあることが「共存共栄」という理念をさらに徹底し、中身を充実させていくことになります。「共存共栄」のためには、地域の皆さんから信頼を得なければいけません。そのためには滋賀銀行が「自己責任原則に基づく独自経営」を具体的に実践しなければ、当行を選択していただけません。
地域社会と地方銀行は、「地域社会が健全であれば、地方銀行も健全である」と同時に、「我々地方銀行が健全なメッセージと価値観を具体的な行動で地域社会にぶつけることで、地域社会は健全になる」と考えています。両者が「Win−Win」の関係にあることが「共存共栄」という理念をさらに徹底し、中身を充実させていくことになります。「共存共栄」のためには、地域の皆さんから信頼を得なければいけません。そのためには滋賀銀行が「自己責任原則に基づく独自経営」を具体的に実践しなければ、当行を選択していただけません。
「独自経営」として当行が積極的に展開しているのが、「3つのブランド戦略」です。
その1つ目は、「知恵と親切」を提供するしがぎん。単に金利だけでサービスするのではなく、資産運用の提案やビジネスマッチング、M&Aの仲介、ニュービジネスへの取組み支援など、あらゆる角度から、「知恵と親切」を提供していく「課題解決(ソリューション)」型の営業展開です。
2つ目は、「アジアに強い」しがぎん。地元企業の「アジアビジネス」が多面的に広がってきていますので、アジアとどのようにリレーションを構築していくかが地元企業の永続的な発展のために、非常に重要なテーマとなっています。当行は、関西の地方銀行で唯一、香港に支店を持っています。そして、上海に駐在員事務所を持っています。これらと本部における「アジアデスク」というスペシャリスト集団、そして現業店の3つがトライアングル関係で真価を発揮し、本当に値打ちのある情報の提供など、多面的にサポートしています。
3つ目は、「環境経営」を主軸とした「CSR」のしがぎん。そもそもの由来は、21世紀の展望を、当行として地域の皆さんと一緒になって真剣に考え、それを具体的なアクションに展開していくことが地方銀行としての存在価値につながるはずだという信念があるからです。「クリーンバンクしがぎん」というスローガンで、平成12年のISO14001の取得に始まり、グリーン購入、エコオフィスづくりなど、あらゆることをやってきました。その中で、我々が最も重視したのは、地域の皆さんとの日常の営業の世界に、環境保全を取り込んだ「環境金融」です。当行では、この「環境金融」がCSRの大きなエレメントであるという意識の下、この問題にいち早く具体的なアクションを展開してきましたが、これをコアにしてもう少し視野を広げよう、それが「CSR(企業の社会的責任)」だと考えました。

▲ CSRリポート2006
「クリーンバンクしがぎん」
当行のステークホルダー(利害関係者)に対して、社会的な責任を全うし、遂行していくところも多面的に充実していかなければいけないとの思いで、平成12年に設置した「ふれあい環境室」を3年前に「CSR室」に昇格させました。そして対外的なメッセージとして発信していた情報ツールも、それまでの「環境リポート『クリーンバンクしがぎん』」から質的に充実させた『CSRリポート』にレベルアップしました。
以上が総論的に、私が10年間の銀行経営で実践してきた、基本的な戦略、ビジョンと、その中でのCSRの位置付けです。そこでCSRの各論として、どういうことを考えているかということをお話ししなければいけないと思います。CSRというものがそもそも日本の社会でクローズアップされてきたのは、残念ながら内外における企業スキャンダルの続発がきっかけでした。
2002年、エンロンやワールドコムの粉飾決算という大事件がアメリカで起きたときに、アラン・グリーンスパン氏(前・米国FRB議長)が「感染する貪欲(Infectious greed)」という言葉で、アメリカ流の短期の利益追求型のキャピタリズムに対する、あるいはグローバリズムに対する警鐘を鳴らしました。まさに感染する貪欲が日本に飛んできて、アメリカ資本主義の軍門に下るというような体たらくが今なお続いている状態です。
こういった現状は、「企業とはそもそも何のために存在するか」という極めて素朴な原点に立ち返って、古今東西のより大事な哲学のところを問いかけている、と私はとらえています。我が滋賀県では、近江商人が400年以上も前に、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」という近江商人哲学を確立し、実践してきました。そしてこの三方よしの哲学を当行の先代の頭取が昭和41年に、「自分にきびしく、人には親切、社会につくす」という「行是(社是)」にしました。この極めて単純明解な3つのキーワードに落とし込んだ滋賀銀行の「行是」は、三方よしのDNAを引き継ぐ当行の家訓中の家訓であり、変えることのできない不易の哲学です。
これを、今日的な時代環境を踏まえて咀嚼し直して経営理念に落とし、その経営理念を私自身も含めた役職員一人ひとりの日常の行動規範の中に具体的なメッセージとして落とし込むことで、「行是」「経営理念」「行動規範」の3点セットがきちんと確立され、しかもそれを役職員全員が実践していくことが、当行としてのCSR経営を完成する上で非常に大事なことです。
2002年、エンロンやワールドコムの粉飾決算という大事件がアメリカで起きたときに、アラン・グリーンスパン氏(前・米国FRB議長)が「感染する貪欲(Infectious greed)」という言葉で、アメリカ流の短期の利益追求型のキャピタリズムに対する、あるいはグローバリズムに対する警鐘を鳴らしました。まさに感染する貪欲が日本に飛んできて、アメリカ資本主義の軍門に下るというような体たらくが今なお続いている状態です。
こういった現状は、「企業とはそもそも何のために存在するか」という極めて素朴な原点に立ち返って、古今東西のより大事な哲学のところを問いかけている、と私はとらえています。我が滋賀県では、近江商人が400年以上も前に、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」という近江商人哲学を確立し、実践してきました。そしてこの三方よしの哲学を当行の先代の頭取が昭和41年に、「自分にきびしく、人には親切、社会につくす」という「行是(社是)」にしました。この極めて単純明解な3つのキーワードに落とし込んだ滋賀銀行の「行是」は、三方よしのDNAを引き継ぐ当行の家訓中の家訓であり、変えることのできない不易の哲学です。
これを、今日的な時代環境を踏まえて咀嚼し直して経営理念に落とし、その経営理念を私自身も含めた役職員一人ひとりの日常の行動規範の中に具体的なメッセージとして落とし込むことで、「行是」「経営理念」「行動規範」の3点セットがきちんと確立され、しかもそれを役職員全員が実践していくことが、当行としてのCSR経営を完成する上で非常に大事なことです。

▲ 行是とCSR憲章(経営理念)、行動規範が書かれた、
行員がいつでも持ち歩ける名刺サイズのカード
4月からバーゼルUを反映させた新世紀第3次長期経営計画を打ち出しましたが、このベストタイミングに、経営理念をもう少し今日的なものにアレンジしました。「行是」は不易の哲学として堅持し、経営理念については3項目からなる「CSR憲章」に改め、そして新たに8項目からなる「滋賀銀行の行動規範」を制定しました。「CSR憲章」では、「三方よし」という我々のDNA、近江商人の哲学こそが日本人が心すべきCSR経営のエキスであると認識し、「自分にきびしく、人には親切、社会につくす」という「行是」を原点にして「滋賀銀行は何のために存在するか」「共存共栄とは誰とのものなのか」を考えました。当行が大事とすべき「共存共栄」は3つあります。まず1つ目は、お取引先、年金生活者、預金者など「地域社会」そのものです。2つ目は、滋賀銀行という組織体を構成する「役職員」です。滋賀銀行で仕事をすることによって、生きがい、自己実現の喜びを感じ、活力のある組織体にならなければならないと考えました。「CS(顧客満足)」は「ES(従業員満足)」があっての「CS」であるし、「CS」があっての「ES」であると。3つ目は「地球環境」です。琵琶湖畔に本拠を置く企業の社会的使命として地球環境を守り、持続可能な社会づくりをすることが必要だと考えました。
それぞれについて具体的な施策が伴わなければ、空念仏になってしまいますから、もっと知恵を出していこうと決意をしたのがこの「CSR憲章」です。それを踏まえて、A君、Bさん、パートタイマーのCさんも、自分の日常行動が「滋賀銀行の行動規範」に謳われた8項目に合っているかどうか、時々はポケットから出して、見つめ直そうということで携帯用カードも全役職員に配布しました。
それぞれについて具体的な施策が伴わなければ、空念仏になってしまいますから、もっと知恵を出していこうと決意をしたのがこの「CSR憲章」です。それを踏まえて、A君、Bさん、パートタイマーのCさんも、自分の日常行動が「滋賀銀行の行動規範」に謳われた8項目に合っているかどうか、時々はポケットから出して、見つめ直そうということで携帯用カードも全役職員に配布しました。
(澁谷)
先ほど、FIRB(基礎的内部格付け手法)のお話がありましたが、貴行は今年の三月に金融庁の承認を受けられました。
(田頭取)
「バーゼルII」のFIRBの承認を受けたのは、地銀では64行中、5行だけです。「これは大変な快挙」と私自身思っています。私も精魂込めてきましたし、若い行員もこれに食らい付いてやってきました。私は非常に大きな財産だと思います。これを機会に、お客様に「バーゼルIIに合格した」ということの意義を十分理解していただいて、融資取引などあらゆる取引で、当行を選んでいただくということが大事なのです。
「バーゼルIIに合格した」ということは、「当行が自己責任原則を踏まえた高度なリスク管理のもとで、銀行の本質ともいうべき積極的なリスクテイクができる新しいステージに立った」ことを意味します。このメッセージをお客様にお伝えするだけでも、お客様は「そうか、頼りになる銀行なんだな」と思ってくださることになります。金利についても、それぞれの事業内容に応じて、リスク量をしっかりとメジャーし、リスクに応じたプライシング(付利)をしていくということです。それが金融業として、リスクテイクする上で当然の哲学だと、お客様にご理解いただけるはずです。行員には、そのための責任は経営陣が全部引き受けるから、これを1つの土台として徹底しなさい、ということで、奮闘してもらっている最中です。
(澁谷)
「CSRリポート」ということで、きちんと社会に伝達していくということも大切ですね。
(田頭取)
大事なことだと思います。それは「クリーンバンクしがぎん」というスローガンでやってきた時に、「クリーン」とは何かということになりますが、私としては4つの事を実践しています。第1が、当行自身がエコオフィスでなければいけないということです。省エネや省資源をめざし、グリーン購入やCO2削減等を身をもって実践することです。2番目は、環境対応型金融商品・サービスの開発、提供を通して、地域社会の皆さんと当行が連携して環境保全活動を具体的に展開していくことです。3番目は、倫理観の強い行員づくりに努めることです。4番目は、まさにディスクロージャーです。単にディスクロージャー誌を作って、経営内容を無味乾燥な活字、数字だけで示すのではなく、やはり当行の思い、私自身の生き様、ビジョンというものを生の声で発信していくことが非常に大事なことだと思っています。「CSRリポート」も、私が自ら巻頭言を書いています。

▲ 田頭取は、環境重視の経営が高く評価され、
総合ビジネス誌「財界」平成18年度「経営者賞」を受賞されました。
リッキービジネスソリューション(株)澁谷耕一
インタビューを終えて
本年3月に、地方銀行5行(滋賀銀行、横浜銀行、静岡銀行、千葉銀行、福岡銀行)がFIRBの承認を受けましたが、滋賀銀行は過去8年間にわたり、お取引先企業との「合理的なコミュニケーション・ツール」として、独自の「企業格付制度」の改善に努めてこられました。独自の格付をお取引先企業に開示し、それを「カルテ」として企業の課題を共有し、業務改善、企業体質・財務体質の強化を一緒に考えるというものです。滋賀銀行も格付開示によって、企業の情報を共有し、格付けに応じたプライシング交渉を進められるだけでなく、ビジネスチャンスの発掘にもつながります。最終的に、企業の格付けがランクアップすることで、企業も滋賀銀行も共に「企業価値」を向上させ、共存共栄が図れるわけです。
「共存共栄」の理念、CSR、環境経営、さらに「自己責任原則による独自経営」とは何かについて、頭取から貴重なお話を伺うことができました。今後も頭取のリーダーシップのもと、滋賀銀行が地域社会の発展のために多くの貢献をされることを期待しています。
(2007/05/15 取材)|(2007/06/07 掲載)



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