英国の中小企業金融

第1回 中小企業の定義の違い

我が国の中小企業問題と英国はじめ欧州の中小企業問題を比較考察する際に、先ずその定義の違いに留意する必要があります。

ご承知のように我が国の中小企業の定義は以下のようになっています。

【日本の中小企業の定義】
  払込資本金 従業員数
製造業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円 100人以下

一方英国では中小企業SME(Small and Medium-sized Enterprises)の定義には、以下のように単純に従業員数のみで分類した統計が使われることが多く、単純比較はできません。

【英国の中小企業の定義】
  従業員数
零細企業 0 - 9
小企業 10 - 49
中企業 50 - 249
大企業 250 以上
DTI(Department of Trade and Industry, 英国貿易産業省)定義

しかし最近はEUの下記の定義に基づく統計も見られるようになって来ました。

【EUの中小企業の定義】
  払零細企業
Micro firm
小企業
Small firm
中企業
Medium firm
売上高 40万ユーロ以下 7百万ユーロ以下 4千万ユーロ以下
総資産 27万ユーロ以下 5百万ユーロ以下 2千7百万ユーロ以下
従業員数 10人未満 50人未満 250人未満
独立性 25% 25% 25%
注:独立性は特定の一社若しくは数社による株式所有が最大でも上記割合を超えないこと。SMEの範疇に入るのは上記基準のうち従業員数と独立性の両方を満たし、かつ売上高か総資産のいずれかの基準を満たす企業とされている。この基準にあてはまらないものを大企業としている。

とまた英国の会社法では以下の3つの要件のうちいずれか2つを満たせば中小企業(SME)とされます。

【英国の会社法での中小企業の定義】
  小企業 中企業
売上高 280万ポンド以下 1,120万ポンド以下
総資産 140万ポンド以下 560万ポンド以下
従業員数 50人以下 250人以下

一方BBA (British Bankers' Association) の出している統計では年商百万ポンド以下の企業をすべてsmall businessとして分類しています。

著者:戸田 洋正
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