第6回 日英のベンチャー・キャピタル状況
次にエクイティ・ファイナンスについてご報告いたします。British Venture Capital Association (BVCA)によるとイギリスは欧州最大のprivate equity投資国です。2003年度は64億ポンド(約1兆2千8百億円)が1,500の企業に投資されましたが、そのうち41億ポンドが英国内の約1,200の企業に投資されました。欧州全体での年間投資規模が約3兆1千億円ですので、英国はその約4割を占めていることになります。 ベンチャーキャピタルの年間投資額は欧州全体では近年やや低下傾向を示しているものの、英国では堅調に伸びています。
またprivate equityの投資を受けた企業の雇用も活発で、2003年までの5年間でこれらの企業はFTSE 100の上場企業に比べ約4倍の従業員数の伸び率を示しました。
一方我が国のベンチャーキャピタル(以下VC)は経済産業政策局の平成15年3月発表の調査によりますと、2001年10月から2002年9月までの一年間の投資総額は1,813億円、件数では2,788件で、前年比金額ベースで35.8%減少、件数ベースで25.4%減少となっています。英国と比べ件数のわりに金額が少ないのは、我が国VCの特徴が反映しているといえます。日本のVCは一つの案件にこだわらず、常に小口分散をしようとする傾向が強く、ひとつの案件には他のVCと同額かそれ以下の投資額に抑えようとするのが一般的だからです。
一方英国のVCは内容の良い案件の場合は、他のVCの参入を嫌い一社独占を条件にするケースもよくみうけられます。これは日本のVCのうち62%が銀行・保険会社その他事業会社の子会社であること、そのため案件審査・判断を行う人のほとんどが親会社派遣のサラリーマンであり、横並び意識が強いことと関係があるものと思います。

【日米欧投資残高の推移】
(出典:平成14年度経済産業政策局報告書より)

【日米欧年間投資額の推移】
(出典:平成14年度経済産業政策局報告書より)
投資残高ベースでは日本は2002年時点で約1兆127億円でした。これは欧州の投資残高の14分の1にすぎません。また、投資先の設立年数では設立5年未満への投資が過半数で、設立投資は僅か1.5%に過ぎません。‘創業支援’という観点からは日本のVCがその役割を果しているとはまだまだ云い難い状況です。
| 件数(N=80) | 金額(N=79) | |||
|---|---|---|---|---|
| 設立後の年数 | (件) | 構成比 | (百万円) | 構成比 |
| 設立投資 | 42 | 1.8% | 1,875 | 1.5% |
| 設立後〜5年未満 | 1,204 | 52.7% | 65,862 | 52.0% |
| 5年以上〜10年未満 | 364 | 15.9% | 19,382 | 15.3% |
| 10年以上〜15年未満 | 221 | 9.7% | 11,070 | 8.7% |
| 15年以上 | 454 | 19.9% | 28.546 | 22.5% |
| 計 | 2,285 | 100% | 126,735 | 100.0% |
以上概括してまいりましたように、我が国のVC市場はまだ未成熟であるため、英国のように銀行借入から脱却してエクイティ・ファイナンスにシフトするよう経営者に期待することは難しい環境にあります。 我が国の信用保証は地方公共団体も併せて既に十分な制度が作られていると思います。保証制度をこれ以上拡充するよりも、個人包括根保証を止め、担保・保証に頼らず自分で事業リスクを判断して融資するという、本来金融機関が持つべき審査能力をより一層強化することこそ必要であろうと考えます。 また、銀行・保険会社・事業会社の子会社で占められているVC市場を改革して、優秀なベンチャー・キャピタリストが多く育つことのできるよう環境整備を行うことも有効だと考えます。



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