
第1回 英国ホンダ(1)〜欧州で快進撃を続ける日本企業の秘められた努力〜
英国ホンダ
モーターサイクルでホンダといえば押しも押されもせぬビッグ・ブランドだ。ブランド名だけでも顧客がつくだろうと思っていたが、欧州はそんな甘い市場ではなかった。

▲ 英国ホンダ社
営業部長 マシュー・ストーン氏
世界を代表する欧州系の大手メーカー各社がしのぎを削り、さらに日系の各メーカーも加わって熾烈な販売合戦を繰り広げている。そんな中で更に売上げを伸ばしてゆくために、営業分野だけでなく保険にまで工夫を凝らす男がいた。英国ホンダ社の営業部長マシュー・ストーンだ。 マシューはユーザーが自分の会社の製品を買わない理由を一つ一つ検証していった。英国では日本のような強制加入の自賠責保険と任意加入の保険といった区別はなく、民間の保険への加入が全てのユーザーに義務付けられている。
しかし保険料は市場次第で大きく変動する。自動車に較べてモーターサイクルの場合は、ユーザーにとって保険料の総費用に占める割合が大きいため、保険料が高いことが理由で買い控えたり、購入車種を低価格のものに変更するケースが多いことが分かった。 彼の中で自社製品を買ってくれるユーザーには保険を低価格で安定して供給したいという思いが高まってきた。
英国ホンダが自社ブランド保険を立ち上げた理由
ホンダに限らずあらゆる二輪車メーカーにとって、英国の消費者が二輪車製品を買わない最大の理由のひとつは保険である。1000ccの製品を買いたいと思っていた消費者が保険料が理由で600ccの製品しか変えないといったケースはよくある。保険が消費者のチョイスを制限してしまっている。販売量の拡大において保険が最大のネックであるという認識をしている。
マシューはついに保険をホンダが直接ユーザーに提供しようと決意した。
著者:戸田 洋正