アメリカ通信−シリコンバレーの風−

シリコンバレーの風 Vol.3

6月のシリコ ンバレー(以下 SV)の太陽は刺すような、もう真夏の日差しです。
でも、朝夕は冷気に包まれひんやりと快適。又、日中も湿気がないので、木陰に入ると心地よい涼しさです。むろん梅雨などありません。夏休み前のひとがんばりの時期。6月も中旬になると学校は終わり、一挙に二ヶ月の長いバケーションに突入です。

 

シリコンバレーの銀行

金融の街サンフランシスコに近いせいか、バンク・オブ・アメリカ、ウエルズ・ファーゴ、ユニオンバンク、バンク・オブ・ザ・ウエスト、シティ等の大手に、ローカルの銀行を加えた各支店のサインが、街のあちらこちらで目につきます。いずれも窓口が4−5人の小規模な支店が多いようです。個人や中小企業向けのリテール金融、ミドルマーケット金融が中心でしょうが、資本金調達を資金源の基本とするベンチャー企業が多いSVでは、運転資金の貸付業務は借り手のリスクの高さもあり主力サービスには見えません。せっせとネットワークのグレードアップを計り、人件費、支店削減に努め、顧客をインターネット利用に積極的に導いているようです。

それに比べると住宅ローン合戦は異常ともいえる状態で、10年間金利のみ支払いの住宅ローンが飛ぶように売れています。ある日突然のバブル崩壊が来ないことを祈るのみです。

カードローンも多分最大限の収入のひとつでしょう。最近の新聞によると、アメリカ人家庭のカードローンの平均残高は70万円以上との事です。スーパーで数ドルのものを買って、カードで何の遠慮もなく支払いができ、しかもそのついでに“キャッシュバック!”と叫べばお金までカードで貸してくれる貸付サービスまであります。年率が20%になる金利でも、毎月最低の元利支払いをすれば誰にも督促されずに買い物三昧。高い金利をよそに、カードは完全に人々の財布の代替になっています。

 

ベンチャー起業家達

一時の過熱気味のベンチャー立ち上げは収まったものの、夢を持った潜在的な起業家達の活動は準備期間を十分とる形で深く静かに進んでいます。どの時点で顔を出し市場に名乗りを上げるかが重要になってきました。市場とのミスマッチを起こさないために当初よりマーケッテイングの経験者をチームに加えるケースが多くなっています。

 

ボーダーレスの会社形態

IT分野でみると一昔は、まず米国市場で製品の慣らし運転。その上で欧州やアジア市場を狙うのが一般的でしたが、かなり変化してきました。米国市場での設備投資が一巡したこともあり、全世界市場を当初よりターゲットとする市場戦略が主流になりつつあります。一旦、名乗りを上げると、競争激化のため、ゆっくり時間をかけられないという理由もあるのでしょう。

ベンチャー立ち上げ時から、
(1)収益を上げる市場は米国、欧州、アジアの同時展開
(2)製品展開は中国、台湾、日本
(3)R&Dはインド、中国、イスラエル
(4)税制、法制に適した最適な国に本社を設定(シンガポールなど)
の分散化が見られます。業務、オペレーションの世界化とも言うべきでしょうか。それでも、技術・デザイン創造、IR戦略などの中核となる知的事業戦略はSV が最適です。これらのコア戦略立案を担う、世界的に数が限られたプロの存在や、彼等を支える周辺のさまざまな幅広いサポートが、当地にしっかりと根付いているからでしょう。大手石油会社や多くの巨大米国企業と同様、SVのこれらベンチャー企業からも最初から国籍がなくなっていると見た方がよいのかもしれません。

 

起業家分類

地元での勝手な分類をすれば、最近の当地起業家は
① 夢追い型、(新しいコンセプトで市場を創造)
② バージョンアップ型(つなぎ技術、時代中継型)
③ 即戦略型(今の市場にすぐ使える迎合型)
に分けられるでしょう。バージョンアップ型が多いのが残念ですが、今の主力の高速サーバーを半減させるような、時代を変える技術にも取り組む若手起業家達もいて、頼もしい限りです。しっかりした夢追い型モデルにはVCからのお金も殺到しています。

 

起業家達の出口基準

“こんな素晴らしい製品が売れない筈はない”との信念で突っ走った2000年までのベンチャーは市場での手痛いしっぺ返しを受けました。何が何でも上場が出口との考えも、すこしなりを潜めたようです。バージョンアップ型の起業家達だけではなく、夢追い型達も同じ。自分達の製品やアイデアが市場に出て、成功者としての金銭的見返りが十分あるなら、大手競業会社への自社の売却は最大の成功出口です。

 

これからのシリコンバレー予測

何が起きてもおかしくないSVは、何か起きないと面白くない。世界中からここに集まる人々の米国籍(SV籍)の概念は通常の国籍とは何かちがいます。それは、自由を求めて新しい目標にチャレンジする米国クラブの、メンバーシップのようなものでしょうか? 母国の国籍ルールに優先するこのメンバーシップルールへの忠誠を誓えば、国籍の取得は比較的簡単です。そして、あらゆることに挑戦する米国での自由と権利が与えられます。でも、祖国を忘れるわけでも、捨てるわけでもないのです。又、捨てることを強要されることもありません。

著者 : 道高幸彦(みちたかさちひこ)−Sachihiko (Mike)Michitaka

シリコンバレー在、Ocean Seven Consulting, LLC ファウンダー & CEO.
日商エレクトロニクス(株)顧問役、(日商エレクトロニクス米国会社ボードチェアマン)。在米19年、2000年夏よりシリコンバレー在住。

米国IT会社マネジメント兼、コーポレートベ ンチャーキャピタリス ト(CVC)。 IT分野で数々の投資及び,日本市場での米国先端IT製品の販売を成功させている。 数多くの日米会社経営を経験、また地元シリコンバレー地区青少年更正センター理 事 などのボランテイア活動の他、CVCや経営指導者として日系起業家支援を続けている。

2005年6月末、日商エレクトロニクス常務執行役員及び米国法人社長を退任。
同年、7月シリコンバレーでマネジメントコンサル会社Ocean Seven Consulting, LLCをファウンダー・CEOとして設立。

1992年: 日商岩井米国法人 副社長
1996年: 日商岩井 情報産業本部副本部長
関係会社担当。ニフティ、インフォコム,フュージョン等の役員を歴任。
同志社大学卒、ハーバード ビジネススクール PMD コース修了
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