聞き手:リッキービジネスソリューション(株)上條 美絵

▲ Next W・ingプロジェクト室
浅山理恵室長
上條
現在の銀行は、以前に比べてサービス業としての対応を求められていますが、銀行の顧客にとってどのような変化が起きていますか?
浅山室長
ここ数年で「貯蓄から投資へ」と言われるように、日本人の運用や資産形成に関する考え方が大きく変わってきたと感じます。昨年の上げ相場に後押しされた部分や、株について身近に感じられるさまざまな事柄や情報があったからだと思いますが、成熟までは至っていないものの、確実にリスク商品を通した資産運用への関心も高まっています。これは銀行だけでなく、金融機関では広く感じられていることだと思います。
また、女性マーケットについては、マクロでの少子高齢化の傾向もありますし、非婚化・晩婚化・晩産化が進み、結婚しても仕事を続ける女性も増えています。夫婦と子供という世帯が3割を切っている、という家族モデルの変化もあります。
銀行もここ数年で個人のお客さまを対象としたビジネスが立ち上ってきて、商品も一通り揃っています。銀行が、より多くの個人のお客さまにリスク商品を含め様々な商品をご提供できたことは、お客さまにとっても資産運用についての知識・情報や購入のチャネルが増えたことにもつながっているのでは、と考えています。
上條
メガバンクだけでなく地方銀行でも、女性の登用や女性顧客向けの商品開発が進んでいます。女性の顧客に変化が生じたことで、銀行にも変化を求められたのでしょうか。
浅山室長
色々と要素がありますが、まず個人部門のビジネスとしては、女性社員に対するニーズが高いことがあります。ご来店される個人のお客さまの半分以上は女性です。個人のお客さま各々のニーズをお伺いしながらご提案していくコンサルティングでは、女性の社員が大いに求められます。また、富裕層のお客さまの中にも、女性社員に担当してほしいという方もいらっしゃいます。弊行でも支店長クラスの管理職に、現在12人と女性が増えており、個人ビジネスでの女性戦力のウエイトはたいへん高まっています。
更に銀行サイドの要素としては、人材確保に対する競争があげられます。金融機関でビジネスをしていくための人材スペックとしては、金融・経済知識、理解力、対人コミュニケーション能力などいくつかあります。しかしそうしたスペックを持った人材は、金融に限らずどこの企業でも必要とされますから、最近は景気回復による採用増のおり、人材獲得競争が激しくなってきました。知識、スキルを備えた女性社員については、競争力の確保、人材の確保という点でたいへん貴重で、女性が働きやすい職場づくりを今後もいっそう進めていかなければいけないと思っています。
上條
そのような中で、女性だけで運営される
Next W・ingプロジェクト室が立ち上げられ、女性市場の開拓だけではなく、女性社員にとってより良い職場づくりについても取り組まれることになった経緯を教えてください。
浅山室長
「女性のお客さまと三井住友銀行の女性社員という、女性の二面的な存在をフォーカスしていく必要がある」という経営サイドの判断で、昨年5月にプロジェクト室の前身として、まずは個人部門の中での女性のプロジェクトチームが立ち上げられました。
プロジェクトの前半では、あえて金融という枠をはずして、女性のニーズや消費の行動特性について掘り下げてみました。
金融商品は、あまり男女差がつきにくいとも思いましたが、金融機関に勤めていて合理的な考え方に慣れている彼女たちでも、やはり女性ですから、バーゲンやポイント制には惹かれるし、レストランはきれいでトレンディーなお店を好みます。ですから、女性には男性とはちがう好みや嗜好があるのではないかと考えました。また、プロジェクトチームのメンバーが30代中心だったので、他の女性管理職やパートなど社内の異なる年齢層にもヒアリングを行いました。メーカーや雑誌社を含む他業他社も訪問しましたが、特に雑誌社の明確にセグメントされたマーケティングの考え方などは、参考になりました。
その結果、女性のニーズや消費行動は年代で区別するよりも、未婚・既婚の別や仕事・子供の有無などのライフスタイルに大きく左右されるのではないか、という結論となり、とりまとめたものを行内でプレゼンテーションしました。
プロジェクトの前半では、あえて金融という枠をはずして、女性のニーズや消費の行動特性について掘り下げてみました。
金融商品は、あまり男女差がつきにくいとも思いましたが、金融機関に勤めていて合理的な考え方に慣れている彼女たちでも、やはり女性ですから、バーゲンやポイント制には惹かれるし、レストランはきれいでトレンディーなお店を好みます。ですから、女性には男性とはちがう好みや嗜好があるのではないかと考えました。また、プロジェクトチームのメンバーが30代中心だったので、他の女性管理職やパートなど社内の異なる年齢層にもヒアリングを行いました。メーカーや雑誌社を含む他業他社も訪問しましたが、特に雑誌社の明確にセグメントされたマーケティングの考え方などは、参考になりました。
その結果、女性のニーズや消費行動は年代で区別するよりも、未婚・既婚の別や仕事・子供の有無などのライフスタイルに大きく左右されるのではないか、という結論となり、とりまとめたものを行内でプレゼンテーションしました。
プロジェクトの後半では、様々なアイディアを具体的な商品やサービスに落としてみたらどうなるかということについて検討し、商品や店舗などの企画について、まとめて発表しました。
また、プロジェクトチームのもう一つのテーマとして、女性が働きやすい職場づくりについて検討し、現場からの声をまとめました。
活動については行内でも特に表明していなかったので、あまり知られていませんでしたが、女性視点でのこういった取り組みを本格的に動かしていくためにも組織対応する必要がある、という判断をうけ、昨年10月にプロジェクト室として設置されることになりました。
上條
三井住友銀行では、女性社員の活性化と仕事・家庭の両立を支援するためのプログラムを豊富にそろえて、積極的に支援していますね。行内の反応はいかがでしょうか。
浅山室長
育児休業、短時間勤務、看護休暇などの既存の制度のバージョンアップや制度の周知といった取り組みを人事部と共に更に進める以外に、仕事と家庭の両立支援に向けた新たな取り組みを行なっています。その一環として、育児休業制度を利用中の社員を対象に、毎月1回、職場復帰支援のためのサポート講座を実施しています。新商品や行内ニュース、相場動向などの最新情報を伝えるこの講座には、子供連れで参加が可能ですから、全くの自己啓発なのですが、ベビーカーを押して毎回参加する社員もいます。参加者にはたいへん好評だったので行内のビデオニュースで取り上げたところ、活動を知らなかった社員から驚きの声も聞かれました。
両立支援には人繰りなど難しい問題もありますが、結婚や出産の経験は捉え方次第で本人にもビジネスにもプラスにしていけると思います。
両立支援には人繰りなど難しい問題もありますが、結婚や出産の経験は捉え方次第で本人にもビジネスにもプラスにしていけると思います。

▲ 『Woman PLUS』や『ダブルウィング』のポスター
女性向け住宅ローンや会員制サービスなど、他の一般向け商品とは別に、あえて「女性向け商品」を売り出されましたが、その目的は何でしょうか。
浅山室長
女性を対象にした商品を出した方が、メッセージとして伝わりやすいと思ったからです。例えば、女性向け住宅ローン
『Woman PLUS』。住宅ローンをもっと女性に利用していただきたいと思っているのですが、それは、自分でライフプランを考え、自ら積極的に資産形成をしようとする前向きな女性を応援することに繋がるからです。投資信託でも、
『6資産バランスファンド<ダブルウィング>』だけではなく様々な商品がそろっているので、ご来店のきっかけになってくれればいいと思っています。この『ダブルウィング』は、女性向けということではなく、女性の視点でわかりやすさを心がけました。運用の必要性や投資理論の基本をきちんと理解してほしいという気持ちで、運用会社の女性チームと共同で企画開発を行ったもので、幅広い年齢層の方にご利用いただいています。
上條
白金高輪に、女性の視点を取り入れたデザイン性の高いコンサルティングオフィスを出店されていますが、このプロジェクトの一環で出店されたのですか?
浅山室長
この店舗については、女性企画と並行して、三井住友銀行のチャネル戦略がありました。公的資金の返済に目処がついた多くの銀行が、攻めに転じようとしています。店舗空白地域に
コンサルティング専門のオフィスを出店するという戦略があり、その中に白金高輪が挙げられていました。
その一方で、女性の視点での店舗企画としても、女性が入りやすく相談しやすいような、デザイン性が話題になるような、おしゃれでゆったりとした店舗があってもよいのでは、と考えたのがきっかけです。
上條
様々な女性誌に広告を掲載されましたが、どのような狙いがありますか?
浅山室長
各世代の女性に人気の高いメジャーなファッション誌のほか、情報誌、フリーペーパーにも広告を掲載し、幅広い年代層に向けて発信してみました。女性は、ショッピング、コスメ、グルメなどの情報収集には一生懸命ですし、スクールに通うなど自分を高めることにも非常に貪欲だと思います。女性誌のさまざまな情報を利用して、紹介されたお店に行ったりヨガのレッスンなどを気軽に試す人が多いですよね。
それなのに、お金に関することだけは、なぜその熱意の対象になりにくいのだろうかと思ったのです。美容や健康について一生の問題と考えるのと同様に、お金は、自分がどう生きていくのか、その人の人生にとても大切なものです。少子高齢化で年金制度へ不信感が生じるなど、将来的な不安要因もいろいろと言われています。これからは特に、お金の働かせ方、生かし方を人任せにしないで、自分で行なっていかなければならない時代です。お金のことを自分のこととしてもっと身近に感じてほしい、ということを訴えたかったのです。
それなのに、お金に関することだけは、なぜその熱意の対象になりにくいのだろうかと思ったのです。美容や健康について一生の問題と考えるのと同様に、お金は、自分がどう生きていくのか、その人の人生にとても大切なものです。少子高齢化で年金制度へ不信感が生じるなど、将来的な不安要因もいろいろと言われています。これからは特に、お金の働かせ方、生かし方を人任せにしないで、自分で行なっていかなければならない時代です。お金のことを自分のこととしてもっと身近に感じてほしい、ということを訴えたかったのです。
上條
注目されてはいますが、日本の金融業界ではまだ小規模でニッチと考えられる女性マーケットに対して、三井住友銀行が強力にアピールするメリットは何でしょうか?
浅山室長
皆さんがまだ女性マーケットを開拓しようとしない理由に、女性が仕事を持ち発言権を持ったといわれても、やはりまだ住宅購入者の名義の約9割が男性であり、収入ベースでも男性の方がまだ多いことがあると思います。
しかし、今後確実に成長するマーケットだと考えられますし、男性よりも女性にフォーカスし、女性の感覚や行動を大切にすることで、世の中に訴えかける度合いが大きくなると思っています。マーケットとしては、まだ金融における主力ではないかもしれませんが、いま正にやっていく価値があると思います。
しかし、今後確実に成長するマーケットだと考えられますし、男性よりも女性にフォーカスし、女性の感覚や行動を大切にすることで、世の中に訴えかける度合いが大きくなると思っています。マーケットとしては、まだ金融における主力ではないかもしれませんが、いま正にやっていく価値があると思います。
三井住友銀行全体のブランドイメージや評価があがり、女性はもちろん多くのお客さまが住宅ローンや資産運用の相談をしたいと思ったときに、ファーストコールバンクとしてすぐに三井住友銀行を思い浮かべていただけるといいなと思っています。
上條
他行でも女性向けのサービスが次々とでてきていますが、三井住友銀行の強みは何でしょうか。
浅山室長
女性マーケットの開拓に限らず、弊行は、日本の銀行の中で最も早く個人業務に特化したビジネスモデルを作り上げています。ですから、総合金融サービス業として先駆者としての自負がありますし、現実に投資信託や年金商品の販売などの実績にも表れていると思います。
お客様お一人お一人に合った提案をしていくコンサルティングビジネスを、個人業務の柱として明確に定義づけています。
お客様お一人お一人に合った提案をしていくコンサルティングビジネスを、個人業務の柱として明確に定義づけています。
もう一つの柱は、マスリテールビジネスです。決済インフラの開発も先駆的に行っていて、高い評価もいただいています。例えば、ネットバンキングサービス「One’sダイレクト」の使い勝手は、ゴメス社の「オンラインバンキングサービスランキング」で5期連続一位を獲得しています。決済インフラのデファクトスタンダードを構築することも我々の大きな方針のひとつです。
今後コンサルティングビジネスを標榜するもう一つの柱としても、決済インフラを含めたマスリテールビジネスは大きなポイントだと思っています。
上條
今後の展開と課題を教えてください。
浅山室長
金融商品というのは、性質上、女性ならではの特徴付けは難しい面もあり、また一度スタートしますと、何十年もお付き合いいただく息の長いものでなければなりません。
各商品について事業部と協力していく形をとっており、今後もプロジェクト室から女性の視点でアイディアを企画として出していくつもりです。ただ、私としては、女性向け商品を作ることと同様、お客さまご自身に人生設計、マネープランの必要性をきちんとご理解いただくことが大事だと思っています。
三井住友銀行はコンサルティングを柱としており、土日も相談できるといったことをもっとアピールしていきたいと思います。また、お客さまにご来店いただいた際に、三井住友銀行の女性は元気で頼りになるな、と思っていただけるよう、ひきつづき職場環境を整えることや女性管理職を育てるための取り組みも今後の課題だと考えています。
各商品について事業部と協力していく形をとっており、今後もプロジェクト室から女性の視点でアイディアを企画として出していくつもりです。ただ、私としては、女性向け商品を作ることと同様、お客さまご自身に人生設計、マネープランの必要性をきちんとご理解いただくことが大事だと思っています。
三井住友銀行はコンサルティングを柱としており、土日も相談できるといったことをもっとアピールしていきたいと思います。また、お客さまにご来店いただいた際に、三井住友銀行の女性は元気で頼りになるな、と思っていただけるよう、ひきつづき職場環境を整えることや女性管理職を育てるための取り組みも今後の課題だと考えています。
(2006/07/19 取材)|(2006/08/15 掲載)



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