
聞き手:リッキービジネスソリューション(株) 萩野 圭一
上條 美絵
上條 美絵
静岡銀行では女性の活躍が目覚しく、最近では預り資産販売で優秀な成績を修めた上位10名のうち9名を女性行員が占めるという期もあるようです。しかも後方業務(バックオフィス)を主に担当していた方が、キャリアパスで個人営業担当に抜擢され実績を上げています。今回は営業現場のトップで活躍する2人の女性行員の活躍ぶりと、静岡銀行の人材開発の取り組みについてお話を伺いしました。
女性行員による個人営業とキャリアパスについて

▲ 左から長島美樹氏、大橋美智子氏
ここ数年で女性社員のFPを増やしていますが、背景について教えてください。
大橋氏
女性行員の特徴として、預り資産(投資信託、公共債、個人年金保険)の個人のお客様に対して、どちらかというと男性行員よりもお客様へのフォローがきめ細かだということが挙げられます。またあたりがソフトなので、高齢のお客様にとって話しやすいということがあります。法人と違い個人のお客様の場合は、男性の対応では押しが強いと感じる方もいらっしゃいます。
長島氏
お客様のお宅を訪問するのは昼間が大半です。面談されるのは家庭の主婦や年配の方が多いため、訪問される側の心理として、女性と話す方が安心するということがあるかもしれません。
こういった理由で、当初エリア毎にエリアFPを配置する際、女性の方が適任ではないかということになり主に女性が採用されました。平成15年4月にスタートし、ここ1〜2年で人数を大幅に増やしました。もともと営業店の窓口は女性が多く、お客様へ常に資産運用の話をしていたという前段階があったため、比較的女性が取り組みやすかったという背景があります。
大橋さんは、以前は営業店でテラーをしていらっしゃったそうですが、女性行員はどのようなキャリアパスを経るのでしょうか。バックオフィスから営業担当へ転身して活躍される方も多いとお聞きしてます。
大橋氏
私はテラーを担当した後、本部に勤務しました。その後エリアFPを経て現在はカンパニーPB(プライベートバンキング)担当です。窓口担当を経てエリアFPになると3〜5店舗を受け持ちます。更に、PB担当は東部・中部・西部の3つのカンパニー毎に配属されています。
私も、入社当時はバックオフィス業務を行ないました。最近では半年から1年でバックオフィスから窓口に移ることが多く、融資の営業も行なっています。30から40代の社員は、10年以上もバックオフィスで働いてから営業に異動することも多くあります。もっと早くから営業に携わりたかったという気持ちから、いきいきと活動されている方も多いですね。
長島さんは、ご自身の希望で融資から違う分野に異動されたのですか。
長島氏
入社後に窓口を4〜5年経験した後、融資を担当しました。今の部署への異動は、自身の希望ではなくちょうど融資業務が面白くなっていたときだったため、気持ちの切り替えがたいへんでしたが、せっかく与えられた大きなチャンスに精一杯取り組みたいという思いでした。
長島さんは保険の販売でトップの成績になられたそうですね。銀行で保険を購入することへのお客様の反応はいかがですか。また、独自の営業のコツはありますか。
長島氏
保険については、個人年金保険と聞いただけで抵抗感があるという方もいますが、保険といっても運用色が強い点をご理解いただくことで、受け入れていただけました。保険会社のリスクを気にされる方もいらっしゃいますが、ここ1年で随分と状況が変わりました。当行だけでなく他行でも力を入れ始めたので、認知度も上がって比較的身近になり、リスクについて言及する方は減ってきています。
個人年金は長期的な運用商品ですので、基本的にはお客様に無理のないようにということを心がけています。投資信託も含めてリスクがありますし、初めて購入される方が多いので、まずは小額でも試しに購入していただくだけで充分だという気持ちでおります。消極的に見えるかもしれませんが、自分がお客様になった気持ちで無理な投資は進めません。ありがたいことに、お客様の運用ポートフォリオの概要についても教えていただけるので、お客様とお話しながらポートフォリオを組んで、預金と将来への運用のバランスを考えた上で、投資の金額を決めるパターンが多くありました。数字の上で結果を出すことができたのは、お客様と充分お話ができたのがよかったのかもしれません。
個人年金は長期的な運用商品ですので、基本的にはお客様に無理のないようにということを心がけています。投資信託も含めてリスクがありますし、初めて購入される方が多いので、まずは小額でも試しに購入していただくだけで充分だという気持ちでおります。消極的に見えるかもしれませんが、自分がお客様になった気持ちで無理な投資は進めません。ありがたいことに、お客様の運用ポートフォリオの概要についても教えていただけるので、お客様とお話しながらポートフォリオを組んで、預金と将来への運用のバランスを考えた上で、投資の金額を決めるパターンが多くありました。数字の上で結果を出すことができたのは、お客様と充分お話ができたのがよかったのかもしれません。
お客さまのニーズの変化は起きていると感じますか。また、女性向けの商品として開発したいものはありますか。
大橋氏
資産運用に抵抗がなくなったというお客様はいらっしゃいます。しかしまだまだ、お客様自らが希望してというよりは「何か始めなくてはいけない」と思い始めた時期だと感じています。様々な金融商品が身近にはなってきたものの、どうすればよいか分からないという段階だと思います。
長島氏
女性向けという観点とは違うかもしれませんが、個人年金保険の販売が伸びた背景として、家庭の主婦の方が働いているご主人よりも、年金を含めて将来への関心・心配が大きいことがあげられます。女性の方が、長いスパンで家計について考え、夫の退職後の収入について悩んでいます。特に個人年金は、当初は元本保証が付いたものが非常に売れました。その理由としては、お客様のニーズにあっていたということの他に、女性が長期的な資産運用を始める導入段階で、受け入れやすい商品だったからではないか、と思います。
ですから、主婦感覚の目線で家計や子供の養育費のことを考えられるという点で、女性の方が個人営業に向いていると思います。私も主婦の一人としてお客様と同じ目線でお話をしていました。新商品も、主婦の目線で出したら面白いかもしれません。
ですから、主婦感覚の目線で家計や子供の養育費のことを考えられるという点で、女性の方が個人営業に向いていると思います。私も主婦の一人としてお客様と同じ目線でお話をしていました。新商品も、主婦の目線で出したら面白いかもしれません。
静岡のエリアにおける静岡銀行の強みを教えてください。
大橋氏
これまでに築いた信用の大きさを感じています。また、静岡銀行と名乗ると話を聞いていただけますので、知名度は大きいと感じます。
長島氏
静岡銀行だからお客様の家の中へ入れていただける、と感じますし、中にはそう言ってくださるお客様もいらっしゃいます。お客様の受け入れ体制がある中で営業ができるので、たいへん感謝しております。
充実した本部のバックアップ体制と支援制度
初めて投信や保険の取り扱いが始まった時は、抵抗感はありませんでしたか。
また、新しい商品の販売を実施する際の、研修体制はいかがですか。
大橋氏
また、新しい商品の販売を実施する際の、研修体制はいかがですか。
投信については、当初は積極的な販売スタンスはなかったように思いますが、スタート前の研修が充実していました。2泊3日の本部研修もあり、新しいことが始まるという認識はありました。
山本氏
保険など新商品を扱う際には、お客様への説明責任もありますし、準備には力をいれなければなりません。営業経験のない新規担当者には導入研修を実施するほか、FPについては、定期的かつ段階を追って研修を実施しています。
長島氏
私は個人部に移ってから、主に研修関係の仕事をしています。支店からの依頼を受けて訪問し、営業展開の仕方について説明をしたり、応酬話法についてケーススタディをしたりしています。
行員は担当のPBやFPが支店を訪れたときに、問題点や悩みを相談したり、他店のセールスの仕方等の情報を集めたりしています。
行員は担当のPBやFPが支店を訪れたときに、問題点や悩みを相談したり、他店のセールスの仕方等の情報を集めたりしています。
本部のバックアップ制度が充実しているのですね。
大橋さんは社労士もお持ちですね。静岡銀行では、資格の取得や家庭との両立へ向けての支援は行なわれていますか。また制度化するにあたって、他行の動きは参考にしましたか。
山本氏
大橋さんは社労士もお持ちですね。静岡銀行では、資格の取得や家庭との両立へ向けての支援は行なわれていますか。また制度化するにあたって、他行の動きは参考にしましたか。
以前は行内結婚すると多くの女性が辞めていましたが、最近は勤務店舗こそ別々になるものの、同じ地域に勤務が可能とする制度を導入しました。例えば、夫が東京勤務になると、妻は同じく関東地区の支店勤務が可能になります。
10月からは、育児支援等を目的とした“半日休暇”が導入されるほか、通常8時間勤務のところ6時間の短時間勤務が可能になります。中西頭取は以前から女性により活躍してほしいという意識が高い方だと思います。
静岡というエリアが中心なので、都市部とはマーケットが違う部分もありますが、制度をつくるにあたっては、色々な企業を参考にしました。
昔当行で働いていて結婚・出産で離職した方が、グループ会社を含めた社員に戻りたい場合の制度も設けています。
10月からは、育児支援等を目的とした“半日休暇”が導入されるほか、通常8時間勤務のところ6時間の短時間勤務が可能になります。中西頭取は以前から女性により活躍してほしいという意識が高い方だと思います。
静岡というエリアが中心なので、都市部とはマーケットが違う部分もありますが、制度をつくるにあたっては、色々な企業を参考にしました。
昔当行で働いていて結婚・出産で離職した方が、グループ会社を含めた社員に戻りたい場合の制度も設けています。
女性行員のキャリアモデル育成戦略
女性の支店長は13名いらっしゃるそうですが、女性のキャリア開発について、どのようにお考えですか。
山本氏
“選抜研修”という、役職を目指す女性のキャリアアップ研修が3種類あります。「女性ハイパフォーマー講習会」から始まって、「女性マネジメント講習会」、更に「トップマネージャー講習会」に進みます。
1回2日間で行ない、外部から講師を招いて、普段接することの少ないマネジメント分野について学びます。実務的な研修とは違って、コミュニケーション・スキルを学ぶなど面白い内容です。問題解決の仕方やリーダーシップについても学べます。行内での評価が高く、パフォーマンスが伴った女性に参加してもらっており、皆さんは今後昇格するという意識を持ってほしいと思っています。
長島氏
1回2日間で行ない、外部から講師を招いて、普段接することの少ないマネジメント分野について学びます。実務的な研修とは違って、コミュニケーション・スキルを学ぶなど面白い内容です。問題解決の仕方やリーダーシップについても学べます。行内での評価が高く、パフォーマンスが伴った女性に参加してもらっており、皆さんは今後昇格するという意識を持ってほしいと思っています。
選ばれたときは、嬉しさと困ったなという思いと両方でしたが、評価されたことは嬉しいです。女性が評価される機会が増えた事は良い事ではないでしょうか。これによって、今後女性が益々活躍できるといいですね。
女性は手本になるキャリア・モデルが少ないので、実際に活躍する女性が存在することは大切ですね。
山本氏
大橋さんと長島さんの出身店では、続けて選ばれる女性が出ていますので、お2人は良いモデルになっていると思いますね。女性は指導や育成に対する感性がある人が多いと思います。男性はむしろ個別に行動したがると感じます。だからこそ、女性はマネジメント職に向いているのではないかと私は思っています。
長島氏
身近に女性の役席が存在すると、皆実感が湧いて目標が出てきますね。
これからの日本は、外資系企業のように女性もマネージャー職に就き、男性と対等に活躍する社会になるのではないかと思います。
これからの日本は、外資系企業のように女性もマネージャー職に就き、男性と対等に活躍する社会になるのではないかと思います。
最後に、更に改善して欲しいことはありますか。
大橋氏
今が過渡期だと思います。最近は聞かなくなりましたが、10年前に私が結婚したときには、「仕事をやめた方がいいよ」という意見もかなりありました。銀行のスキルは個人と法人の営業に分かれますが、役職が上がれば両方とも携わるようになります。その際、どちらか一方での業務経験しかない場合、不安を感じます。これから必ず上の役職につく女性が出ると思いますが、それを埋めるような制度を考えていただけると、今後入社する社員も目標をもって活躍しやすいと感じます。また人材確保の面でも、就職にあたって外資系や他社よりも当行を選んでいただくためにも有効だと思います。
長島氏
今まで役席を目指したわけではなく、支店の中で自分が任せてもらえる仕事、すなわち自分の居場所を見つけようと考えてきました。その積み重ねの結果として役職がついてくればいいと思ってきました。
私自身は恵まれていて、夫からも仕事をずっと続けていいよと言われていますし、1年弱単身赴任も経験しました。家族のバックアップなしでは続けられませんが、力を抜くことも大切かなと思います。女性だからと逆に肩肘をはらず、仕事と家庭を両立するためにもバランスよくやっていくには、女性らしく力を抜くところもあったうえで、目標とするキャリア像も見つけられればよいと思います。
銀行が評価をしてくれて、仕事を任せてくれるようになった結果として、活躍したいと思う女性が増えることは素晴らしいと感じます。また身近に性別に関係なく目標としたい人が出てきたということも、いい傾向だと思います。
大橋氏
私自身は恵まれていて、夫からも仕事をずっと続けていいよと言われていますし、1年弱単身赴任も経験しました。家族のバックアップなしでは続けられませんが、力を抜くことも大切かなと思います。女性だからと逆に肩肘をはらず、仕事と家庭を両立するためにもバランスよくやっていくには、女性らしく力を抜くところもあったうえで、目標とするキャリア像も見つけられればよいと思います。
銀行が評価をしてくれて、仕事を任せてくれるようになった結果として、活躍したいと思う女性が増えることは素晴らしいと感じます。また身近に性別に関係なく目標としたい人が出てきたということも、いい傾向だと思います。
私は就職したい学生さんのワークショップに出ていますが、頑張って働きたいという意識の高い女子学生が多くいます。男性と対等に働くにはまだ時間はかかると思いますが、私が就職した時と比べて大きく意識が変化していることを感じます。
今後の展開を教えてください。
山本氏
先日、「女性交流会」を立ち上げました。
女性が今までのように敷かれたレールの上を走るのでなく、女性の能力を女性が理解して発展できればと思います。銀行の組織は本部も支店も小さくなっています。残念ながら必ずしもすべての支店に目標となる人がいない、または相談できる人がいないということも起こりえます。そのためこの会を通して、「横のつながり」を作り、女性同士がキャリアに関する意見を交換したり、目標となる人を見つけたりできればよいと思っています。大橋さんは発起人メンバーです。東部・中部・西部と分かれて定期的に開催する予定です。
女性が今までのように敷かれたレールの上を走るのでなく、女性の能力を女性が理解して発展できればと思います。銀行の組織は本部も支店も小さくなっています。残念ながら必ずしもすべての支店に目標となる人がいない、または相談できる人がいないということも起こりえます。そのためこの会を通して、「横のつながり」を作り、女性同士がキャリアに関する意見を交換したり、目標となる人を見つけたりできればよいと思っています。大橋さんは発起人メンバーです。東部・中部・西部と分かれて定期的に開催する予定です。
(2006/08/21 取材)|(2006/09/22 掲載)









