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「食の力で日本を元気に」      日本食糧新聞 記事(2014年4月2日号) 

地方銀行フードセレクション 11月に幕張メッセで

フードセレクションはこうして始まった

リッキービジネスソリューション㈱
代表取締役澁谷耕一

 1年に1回、首都圏に全国の主要地方銀行が一堂に集い、地域固有の食材や特産品、農水産物の加工品、6次産品などを紹介し、全国から集まる有力バイヤーとのビジネスマッチングを図る--。

 世界に類を見ない画期的な商談会「地方銀行フードセレクション」、まさに日本の食シーンをリードする同展が今年は11月11~12日の2日間、幕張メッセ(千葉県)で開催される。これに先駆けて4月2日開幕のFABEX2014にブース出展し、PRする。独自のビジネスマッチング力で成果を上げ、規模を拡大してきた「地方銀行フードセレクション」の成り立ちとこれからを、企画者のリッキービジネスソリューション代表取締役澁谷耕一氏、主催行担当の千葉銀行法人営業部渡辺勝美氏と北陸銀行法人・公共営業部情報戦略グループ野崎栄治氏に聞いた。(日本食糧新聞 山田由紀子)

地方の「安心・安全、おいしい」食材紹介

 全国で開催されている展示会や商談会の中で異彩を放つのが「地方銀行フードセレクション」だ。初来場者は会場に足を一歩踏み入れた途端、一様に驚く。銀行名が入ったのぼり旗が立ち並び、色とりどりのはっぴ姿の銀行員がブースに陣取る。その姿はまるで現代の「国盗り物語」ともいえそうだ。

 同展は「全国の有力地方銀行が自信をもっておすすめする地方の『安心・安全、おいしい』食材を紹介する商談会」というコンセプトで2006年にスタートした。主催は参加行で構成される地方銀行フードセレクション実行委員会。企画・発案者はリッキービジネスソリューションの澁谷耕一代表取締役だ。澁谷氏は日本興業銀行でニューヨーク・香港など海外支店を中心に活躍してきたが、01年愛妻の死を機に子育てと仕事の両立を図り24年間勤めた銀行を退社し会社を興した。当時はメガバンクの統合が行われ貸し渋りが顕在化している頃で、企業はお金を借りたいが銀行はなかなかお金を貸してくれない。銀行も実はお金を貸したいが、融資に必要な資金繰り表や事業計画を企業が作れない。

 そこで、澁谷氏は銀行が求める資料や事業計画を企業と一緒に作り、銀行が企業に求めるものを経営者に理解してもらい、経営者が銀行や銀行員にしてもらいたいかを伝える、いわゆる企業と銀行の橋渡しとして両者をサポートしてきた。こうして構築した金融機関、特に地方銀行とのネットワークが地方銀行フードセレクションに生かされている。

「日本を元気にする原動力に」

地方経済の中核担う地銀×地元バイヤーで販路拡大

 地方銀行がメガバンクに絶対負けないのは地域との密着であり経営基盤の強さ。しかし地方経済の中核を担うべき地方銀行でも現在の日本・地域経済は少子高齢化、急速な人口減により胃袋の縮小という課題に直面している。本来あるべき"地産地消"が成立しない今、人口集約地への販路拡大は急務。売り先を持つ流通機能が重要になる。澁谷氏はある地方銀行が地元のバイヤーを呼び、取引先である食品製造業者、農畜産業者の商品を紹介するのを見て「これを全国規模で実施すれば日本を元気にする原動力になる」と考えた。

 七十七銀行・群馬銀行・千葉銀行・八十二銀行・静岡銀行の5行から賛同を得て06年11月、東京国際フォーラムを会場に「第1回地方銀行フードセレクション」を初開催。出展社102社、1日で約2000人の来場者を確保した。翌年は8行になり208企業・団体が出展、第3回は食イベントの聖地といわれる東京ビッグサイトに会場を移した。第4回の09年に主催行15行、出展400社、来場者約7500人と大きく飛躍。11年からはJETROの支援により海外バイヤーとの商談に注力してきた。

 13年は全国から38行、出展社640社、2日間の会期中に1万0059人の来場と大きく成長した。参加行は青森銀行、秋田銀行、荘内銀行、山形銀行、岩手銀行、七十七銀行、東邦銀行、群馬銀行、足利銀行、常陽銀行、武蔵野銀行、千葉銀行、横浜銀行、第四銀行、山梨中央銀行、八十二銀行、北陸銀行、福井銀行、 静岡銀行、大垣共立銀行、三重銀行、滋賀銀行、京都銀行、近畿大阪銀行、紀陽銀行、鳥取銀行、中国銀行、山口銀行、百十四銀行、伊予銀行、西日本シティ銀行、筑邦銀行、北九州銀行、佐賀銀行、十八銀行、肥後銀行、宮崎銀行、琉球銀行。

有力地銀が自信をもってお薦め

全国からバイヤー来場ブランド力に高評価
千葉銀行
法人営業部・渡辺勝美 氏

 初回から連続参加している千葉銀行法人営業部成長ビジネスサポート室の渡辺勝美氏は「第1回は11月開催なのに募集開始は9月。本当に大丈夫なのか、とやきもきしました。当日イトーヨーカ堂の伊藤雅俊名誉会長がお見えになり、いい商品があるからとイトーヨーカ堂、セブンイレブンの担当バイヤーを呼んでくださった。これが力になりました」と当時を振り返る。

 現在同展は全国からバイヤーが来場するまでにブランドが育った。渡辺氏は「各行がお付き合いのある百貨店やスーパーマーケットなど地域の食品関連バイヤーの皆さまにお声をかけると、その方たちがご都合がつかない場合、支店や営業所にも呼びかけてくれます。全国津々浦々から地域の特産品や珍しい食材、それらを使った加工食品が一度に効率よく見つけられるところが高く評価され来場の求心力になっていると考えます」という。

 会期中、短い時間の中で効率的なPRを行えるように事務局では多彩なプログラムを用意し、出展社のプレゼン力の向上を図るフォローアップが行われる。その一つが商談会用の統一シート(FCP商談会シート)だ。

 「多忙なバイヤーは展示会場を出た途端に次のことを考えるかもしれません。FCP商談会シートをきちっと書いてあれば権限のある担当バイヤーに届くチャンスが増えます」

 また、出展企業担当者にとっても会社や商品の強みや魅力の再発見につながる。渡辺氏はこの気付きが重要なのだという。

ビジネスマッチングが相互にメリット生む

千葉銀行の取組み 出展社同士のコラボを銀行間ネットワークがバックアップ

 千葉銀行の成長ビジネスサポート室は医療介護、観光、農業、ものづくり、国際業務、公的支援策、ビジネスマッチングなど10の領域に取り組んでいる。

 渡辺氏は「お客(取引先)さまの課題は、(1)仕入れ先を探して欲しい(2)新規事業に参入したい(3)新技術・新製品を開発したい(4)補助金・助成金制度を活用したい(5)社員を新たに採用したい(6)海外情報が欲しい、海外に進出したい(7)貿易取引を開始したいなどさまざまで、こうした課題に向けた取組みを推進していますが、最も力を入れているのがビジネスマッチングです。たとえばフードセレクションに8回連続出展している『葉っぱやさん』では出品を『ブーケレタス』1品に絞って販路拡大を果たしました。千葉県内だけでは土地や施設が間に合わず、北海道から九州までエリアを広げ連携できる企業を探しています。出展社同士のコラボレーションは活発で銀行間のネットワークづくりも盛んに行われています。当行でも新潟県の第四銀行さまとコラボし、通信販売事業者へ新潟の生産者や加工メーカーを紹介したりして、お互いのメリットを見いだしています」とさまざまな形にビジネスが展開していると話す。

地元企業の本業を支援

交流人口拡大の好機 北陸銀行・野崎栄治氏が語る参加意義
北陸銀行
法人・公共営業部情報戦略グループ
野崎栄治 氏

 前回代表幹事行を務めた北陸銀行の担当者、法人・公共営業部情報戦略グループ野崎栄治氏=写真=は「地域に密着した金融機関として地元企業の本業を支援し、交流人口を拡大させることが重要と考えます。地方は構造的に人口が減少していきます。それを補うために観光・ビジネスで訪れる交流人口を増やすことが大切です。当行の主要営業エリアである北陸には15年3月に北陸新幹線が長野から延伸され金沢まで開通することもあり、交流人口を増やす絶好の機会が訪れます。地方銀行フードセレクションに参加し、地元の食材を首都圏中心に売り込むことは地元企業の支援、また地元食材の魅力をPRし観光客を呼び込む布石となると考えます」と参加意義を語る。

 また「出展するメリットの第一は、来場するバイヤーの数の多さです。地方でこの手の展示会を開催しても、来場されるバイヤーの数もさることながら大手を地方に呼ぶのは簡単ではありません。その点、地方銀行フードセレクションは流通にかかわる主要な企業のバイヤーが来場しますし中身の濃いものです。当行の呼びかけで出展してくださるお取引さまは毎回半数以上がリピーターであることも、その効率性を反映しているものと考えられます」と特性を語る。

 北陸銀行でも銀行間ネットワークの構築を図っている。野崎氏は「大垣共立銀行さまとの連携で商談会を開催しています。最近では新幹線開業に向けた試みとして八十二銀行さまと連携した商談会も開催。その際には横浜銀行さまにもご協力いただきました。こういった取り組みからコラボ商品が生まれてくる可能性は十分考えられます」と期待感を語る。

地方銀行フードセレクション2014