TOP > 記事・コラム > 金融機関と積極的に連携!!佐賀市の支援事業

佐賀市 経済部 工業振興課 係長 片江 順一 氏

経済収支改善に向けて

佐賀市では、数年前に市の地域経済の構造分析を行いました。これによると経済規模を表す指標の一つであるGDPは約8,500億円、市内外での財の出入りを表す域際収支は、440億円の赤字であることが分かりました。

●起業・創業支援:Saga - Biz カフェの模様
 佐賀市に移住・起業された方の写真館での開催

そこで先ず、経済規模の拡大については、市内企業を様々な形で支援していくことで個々の企業が業績を上げていただくとともに、新産業・企業の創出を図ることに力を入れています。しかしながら、経済規模は人口に依存する部分が大きく、人口減少状況下での改善は、なかなか困難である為、もう一つの要素である域際収支の改善にも積極的に取り組んでいます。

財の流出を抑制する、すなわち財の域内循環を高めるうえで、現在、佐賀市で進めているバイオマス産業は非常に効果があると考えており、清掃工場のごみ処理過程から発生する二酸化炭素を分離回収し、農業や藻類の培養に活用するなど、バイオマス由来の資源・エネルギーを活用した新たな産業の育成を図っています。また、財の流入には、観光客等を呼び込み市内で消費していただくこと、また市外に市内産品・製品を販売して財を獲得していくことが必要です。

佐賀市は、こうした新産業創出の支援、観光客の誘致と市内産品の販路拡大等に全力を挙げており、金融機関との連携は最も重要な要素であると考えています。

中小・小規模企業、起業・創業支援

佐賀市の中小・小規模企業、起業・創業支援は、平成22年から実施している佐賀市産業支援相談事業を軸に展開しています。ここでは、相談者に対して公的支援制度の活用、佐賀市の制度のみならず、国や県の支援制度を積極的に活用するようにしています。また相談者に対する伴走型支援による ビジネスコンサルティングを行うことで、起業・企業の事業段階に応じた支援を継続的に実施しています。

起業・創業支援では、「自ら仕事を作り出せる起業家の発掘・育成」、「高い技術やノウハウを有する起業家の起業促進」する取組みとして、毎月開催している起業家発掘・交流イベント“Saga-Bizカフェ”、年に2回創業支援セミナーを開催、その他インキュベーション施設の設置・運営、 地域資源を活用した事業に対する補助、創業資金に対する補助等を行っています。

●中小企業・小規模企業支援:産業支援相談室での相談模様
 ものづくり補助金申請における事業計画作成のポイントを説明

中小企業・小規模企業支援では、ポテンシャルがある企業が成長軌道に乗れるよう個別に支援する取組みとして、ビジネスマッチング、 伝統産業に対する支援、販路開拓・拡大支援、知的財産活用に関する支援等を、他にも中小企業の魅力向上を目的として、従業員の賃金アップに取組む企業を支援する取組みを行っています。

(1)創業資金に対する支援制度

佐賀県内における創業資金の融資は、全体件数の7割程が日本政策金融公庫による融資で、他は信用保証協会の保証を必要とする佐賀県の制度融資によるものです。この現状に対して、さらに地域の資金で創業を支援するため、本市では今年度から地域金融機関と連携した創業資金に対する補助金制 度を開始しました。

この補助制度を創設する際に、地域金融機関に保証協会の保証を必要としない独自の創業融資商品の商品化をお願いしました。補助の対象は、この独自の創業融資商品を利用した方にしており、金融機関が積極的に創業者の事業を評価して融資を行うことを期待するものです。相談事業を通して創業者への伴走支援を行いながら事業の発展・成長を支援するとともに、金融機関も積極的にこれに関与していただきたいと思っております。

(2)販路開拓に対する支援制度

販路開拓支援では、今年度、金融機関がコンサルティング機能を発揮して事業者の販路開拓を支援する場合、事業者への補助金を既存制度の上限15 万円から2倍の30万円に引き上げるともに、これまで展示会出展のみを補助の対象としていたものを、展示会後の取組みも補助の対象とする制度を 新設しました。金融機関に期待している取組みは、事業者に対する研修会の開催、展示会後のフォロー・営業活動に関するアドバイス、出展者に対する成約調査、売上げ増につながっていない場合の更なる支援、商談先の信用調査、資金需要に対する融資等、販路開拓活動全般関するコンサルティングです。

これは本市も補助金を増額しますが、金融機関にもコスト(人やお金)をかけて事業者への支援を行っていただきたいという趣旨です。

ここで紹介した2 事業は、金融機関との積極的な連携を前提とした支援事業です。これらを立案した背景には、平成27年9月に公表された「金融行政方針」において、金融庁が各金融機関に対し、取引先企業の事業内容、成長可能性等を適切に評価し、融資や本業支援等を通じて、地域産業・企 業の生産性向上や円滑な新陳代謝の促進を図り、地方創生に貢献していくよう求めたことがあります。これを踏まえて、本市では平成28 年度予算において、金融機関との連携を前提とした事業を予算化しました。さらに平成29年度予算編成時までには、地域金融機関の担当者と議論を重ね、金融機関に担っていただきたい役割を考慮に入れ、事業を立案していく予定です。

佐賀市と金融機関との積極的な連携

今年6 月に締結した佐賀銀行を始めとした金融機関(佐賀共栄銀行、佐賀信用金庫、佐賀東信用組合及び日本政策金融公庫佐賀支店)との連携協定は、この「金融行政方針」に示された地方創生への更なる貢献を期待しているもので、将来に向けて行政と金融機関が一緒になって健全な地域経済(健全な地域経済なくして、地域金融機関の経営の健全性も安定的な税収確保もない)を構築していくことを目的としています。

佐賀銀行は、今年7月に独自の創業融資商品を商品化されております。また、今年11 月開催予定の「第11回地方銀行フードセレクション」を視野に入れ、展示会開催の前後に計10回の研修会を開催されます。開催前には商品づくりや商品情報の伝え方など展示会に向けた取組みを、開催後は展 示会の振り返りから展示後のバイヤーへのアプローチなどを、展示会に向けた準備からフォローまで半年以上にわたって、事業者をサポートされる予定です。研修会以外にも個々に事業者への様々なサポートを予定されており、このような取組みが大きな成果につながっていくことを期待しています。

※金融機関ドットヨム25号14ページに記事が掲載されています。