TOP > 記事・コラム > 金融機関職員はコンサルタント

金融機関職員はコンサルタント〜コンサルティングで顧客の信頼を得る〜

リッキービジネスソリューション株式会社 代表取締役 澁谷 耕一

若手金融機関職員の悩み

  ある地方銀行の東京支店で、融資・渉外業務の経験が一年程度の新人営業担当者へ営業セミナーを行いましたが、彼らはみな悩んでいました。入行1、2 年目から営業の現場に出されるのですが、どうやってお客様である企業経営者とコミュニケーションをとり、ニーズや経営課題を把握し、どのようなアドバイスや解決策を提供すればよいかわからないというのです。

  「本店のある地元県内であれば、新規開拓先でも企業経営者に会えるが、東京ではなかなか会ってもらえない。そもそもどうやって企業経営者と会えばよいのか?」というのが若手の皆さんの悩みでした。

 せっかく金融機関に就職して、いろいろな企業経営者と知り合い、中小企業の育成を手助けし、地域の活性化、成長のために自分なりに力になろうと頑張ってきたのに、なかなか思いを果たせずにいるといった感じでしょうか。

一歩踏み込んだアドバイスと支援

 収益重視で手数料を稼ぐことばかりに重点を置かれて意欲をなくしてしまっている若手職員の皆さんも、企業経営者に対して価値のあるアドバイスをし、お客様に感謝されることで金融機関職員としての喜びを感じることができるはずです。すると自信がつき、自分を磨き、お客様の役に立ち、さらに大きな喜びを得ようという好循環になっていきます。こうして金融機関職員としての自信ややりがいを感じることができるようになるのです。

 企業経営者との面談や情報収集を通じて、「一歩踏み込んだ」アドバイスをすることが今、求められています。金融機関職員としての幅広いネットワークや経験、業界に関する知識、財務分析能力など、すべてを駆使して、事業や経営全般に関する支援・アドバイスを行うのです。

コンサルティング営業で経営課題を発見し解決する

 金融機関のIRや中期経営計画の内容をみると、多くの金融機関において顧客企業のライフステージに応じた「コンサルティング営業を実践すること」を掲げています。ある地方銀行の中期経営計画のビジョンには、「課題発見・解決型の企業グループを目指す」とうたわれており、どこにも「金融」の文字は見当たりません。これだけをみると、コンサルティング会社のものと思えなくもありません。

 現在は、メガバンク、地銀、信金、信組、政府系、外資系など、すべての金融機関が入り乱れて競争をしています。そうした中、すべての金融機関のビジョンに、この「企業経営者の課題を発見し解決していく」ということが盛り込まれていると感じます。

 地域金融機関は、中長期的な企業との取引関係の中で、継続的に企業経営者と会い、“one to one, face to face”の関係をつくった上で、事業の評価能力を高め、貸出後のモニタリング等も含めて「企業の経営課題を早期に発見して改善していく」ことを目指さなければなりません。単純に資金を融資するだけの時代は終わりました。重要なのは、コンサルティング営業を実践して、企業経営者と一緒に経営課題を見つけ出し、解決していくことなのです。

コンサルティングで、顧客の信頼を得る

 ビジネスにおいて、最も大切なのはお客様からの「信頼」を得ることです。信頼を得るためには、第一に、お客様に「関心」を持つことが必要です。第二に、お客様をよく知っていること、第三に、お客様の喜びを自分自身の喜びとするという気持ちを持つことが求められます。

 企業の損益や財務状況だけではなく、沿革や事業内容(製品やサービス)、販売先や仕入先、原料調達(国内または海外)、新製品や新サービス、人材の確保や育成、為替の影響、海外展開、リスクマネジメント等、幅広く知ることが重要です。また、企業経営者本人についても、経営能力や意欲を理解し、また、体調、家族構成、趣味等も知っておくと役に立ちます。

 企業経営者というのは、多くの課題や悩みを抱えているものです。金融機関職員の皆さんは、関心を持って、お客様をよく知り、課題を解決して喜んでもらうために一生懸命努力すれば、必ず、「コンサルティング能力」は向上していきます。そして、コンサルティングを通じて最も大切なお客様からの「信頼」を得ることができます。
 地方創生が叫ばれる今、金融機関職員の皆さんに頑張っていただきたいと思います。

経営者の信頼を勝ち得るために
経営者の信頼を勝ち得るために―変化の時代における銀行員のコミュニケーション術
著 者:澁谷 耕一
初 版:2006/02/06
改訂版:2010/06/30
出版社:金融財政事情研究会
書評はこちらから