銀行員のための中国ビジネス講座

第9回 中国のビジネスマナー

挨拶の仕方

握手のマナー

中国の挨拶は握手に始まる。握手に慣れていない日本人が緊張の余り力を入れすぎたり、あるいは親しみを込めて笑顔で長時間握手したまま手を放そうとしない態度も失礼にあたる。相手が同性の場合は、こちらから積極的に握手の手を差し伸べたい。手袋をしている場合は、どんな場合であっても手袋を脱いで握手をするのが礼儀である。


▲ (挿絵)伝統的な中国の年賀挨拶風景

相手が女性の場合は、握手のために女性本人から手を差し伸べてくるのが普通であり、こちらもこれに握手で応えなければ大変失礼なことになる。男性とは握手するのに、女性とは握手せず、手を差し伸べられているのに一方的にお辞儀する日本人男性を見かけることがあるが、これは女性に対して実に失礼な態度ととられる。逆に女性本人が手を差し伸べてこないのに、こちらが手をとって握手することも許されない。その場合はただお辞儀して挨拶すればよい。

初対面のときは、まず相手の眼を見ながら微笑んで「ニンハオ」と(1)ひと声挨拶する。そして一歩近づいて手を差し伸べ(2)握手をする。そして(3)軽く会釈してから(4)自分の名前を名乗り、簡単に自己紹介し、(5)名刺を交換する。これが正しい順序である。

挨拶の言葉はいろいろあるが、「ニンハオ」が一番よい。相手も時間も選ばず、どこでも使うことができる。また、中国特有の伝統的な挨拶として「鞠躬」(ジュイコン…両手のこぶしを目の前に組み、お辞儀の姿勢をとる)があるが、外国人がするのは奇妙である。あくまでも握手で対応するのがよい。
現実には名刺交換しながら握手するケースも多い。握手した手をどのタイミングで放すかは親密度にもよるが、通常は会釈の時であろう。

名刺交換のマナー

80年代に入るまで、中国一般にはもともと名刺交換という習慣はなかったが、今では全国的に完全に定着している。
他方、中国では日本のような名刺交換の礼儀作法はまだ確立されていない。丁重にお辞儀しながら両手で差し出したり、テーブルの向こうから片手でポンと投げ渡すケースまで様々である。中国では特に団体での面談が多いので、訪中のあいだに名刺をきらしてしまうことのないように、日本からは常に箱単位で持参されたい。逆に、無関係なところでまで名刺をバラ撒きすぎると、後日思わぬところで悪用されてしまう事があるので、配る相手には注意が必要である。

喫煙マナー

訪問先では基本的にこちらから先にタバコは吸わないほうがよい。相手が吸う場合は、挨拶のときに必ずといっていいほどタバコを勧めてくる。このとき、勧められたタバコを遠慮して、自分のポケットから自分のタバコを取り出して吸い始める態度がもっとも良くない。「あなたからの好意は受け取れません」と拒絶の意思表示をしているのと同じである。自分もタバコを吸う場合は、相手の差し出したタバコを必ず吸わなければならない。火をつけるのも同様で、ダバコを勧めてきた相手が火をつけてくれるケースがほとんどである。

タバコに火をつけるとき、中国人は一本のマッチで二人のタバコにしか火をつけない。三人以上いる場合は、必ずマッチを擦りなおすのである。これは「三火」と「散?」(友と離別する)が中国語でまったく同じ発音であることからくる縁起かつぎの習慣である。こちらが中国人にタバコの火をつけてあげる立場のときは、この点にも注意しなければならない。

肩書き

必ず職称をつけて呼ぶ

中国における組織、機関の構造は複雑であり、ビジネスの場で中国人の名前を呼ぶときは、基本的にその人の姓に職位もしくは職種をつけて呼ぶ習慣がある。
  1. 行政政機関職員の場合、通常はその人の担当する職位をつけて呼ぶ。例えば、部長、司長、局長、庁長、処長、科長あるいは省長、市長、区長、鎮長である。
  2. 民間企業の場合は董事長、経理、部門経理、主任等。工場であれば廠長、車間主任、工程師、技術員、科学研究事業単位であれば院長、所長、院士、教授、研究員、研究室主任等、学校であれば校長、院長、主任、教授、講師等である。
  3. 軍隊組織であれば、司令員、政委(政治委員)、参謀長、軍長、旅長、団長、営長、連長、排長、班長等である。
  4. 共産党組織であれば、書記、副書記、部長、局長、処長等である。
姓のあとに職称をつけて呼ぶことで、その人に対する敬意を表することとなる。例えば張隊長、李主任、王教授といった呼び方である。なお、職称を省略して呼ぶことも多い。
  1. 工程師⇒「工」、王工程師のことを「王工」と呼ぶ
  2. 局長⇒「局」、張局長のことを「張局」と呼ぶ
  3. 総経理⇒「総」、李総経理のことを「李総」と呼ぶ
職称がわからない場合や確信のない場合は、「先生」(シエンション)、女士(ニュウシー)または「師傳」(シーフ)と呼ぶが、基本的には傍らの関係者に尋ねれば、どう呼ぶべきかは必ず教えてくれるはずである。

必ず姓と名はつないで書く

手紙や文書中で、宛名などで中国人の姓名を書く場合、日本人が十分注意しなければならないことがある。それは人名の姓と名の間に一字空白を設けて、姓と名を離して書いてはならないということである。日本人はよく「山田 太郎殿」というような書き方をするが、これは中国では首と胴体が切り離されている非常に縁起の悪い書き方として忌み嫌われる。特に相手が政府の高官や企業の幹部であった場合は、失脚をも連想させる書き方になるのでなおさらである。必ず中国では「孫中山先生」というように姓と名はつないで書かなければならない。

「同志」と「老板」

文化大革命の時期は「同志」と呼ばれるか否かは敵と見方を判別するうえでも重要なことであった。しかし、この呼び方は極めて政治的な色彩が濃く、1980年代以降は「同志」という呼び方は急激に凋落していった。逆に「老板」(ラオパン)という呼称はもともと「資本家」を指す言葉だったが、現代中国では流行語にもなっており、「〜長」と職称を呼ばれるよりも、「〜老板」と呼ばれるほうが好まれる風潮まで生まれている。単に「ボス」という意味でも使用され、同時に流行語として商品の頭に「老板」という言葉をつける新しい習慣も生まれている。「老板服」とは「高級紳士服」、「老板靴」とは「最新流行スタイルの革靴」、「老板椅」とは「高級家具」を指し示す流行語である。

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著者:筧 武雄
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