銀行リテール戦略
第1回 ちばぎんコンサルティング・プラザ 中央支店 千葉プラザ出張所 所長 岩内紀子氏「全員協力、戦略的リテール営業の現場から」
聞き手:リッキービジネスソリューション(株)大慈弥 晶土

▲ ちばぎんコンサルティング・プラザ
千葉プラザ出張所 岩内紀子所長
お客様の生活パターンに合ったサービス
(大慈弥)
ちばぎんコンサルティングプラザの開設の背景を教えて下さい。
(岩内所長)
個人型のコンサルティング・セールスに力を入れていく中で、店頭でも投信をはじめとする投資型金融商品を活発に販売してきました。お客様の生活パターンの変化により、現在の銀行の営業時間ではお応えできないお客様が増えてきたのです。営業時間の延長や土日の営業により、お客様との接点を持てる場所を作るために新しいサービスのスタイルを考えていこうというのが出発点です。
コンサルティングプラザのある千葉の駅前大通りは、千葉県下でも最も多くの金融機関が集中する金融の激戦区ですが、当行の拠点がなかったために以前から出店を考えていました。また、特色のある個人のコンサルティング専門の特化型店舗にしようということで、他店にはない様々な機能を設けました。プライベートバンキングルームもそうですし、貸金庫を土日も開けているというのは当行では初めての試みです。
(大慈弥)
岩内所長は、これまではどのようなお仕事をされていましたか。
(岩内所長)
松戸支店では、内部役席という、店頭の女性の取りまとめを行っていました。営業推進部に所属していたときに、店頭を見直す必要性がでてきましたので、CS(カスタマーサービス)を中心に女子行員と店頭まわりの指導を行っていました。
サービスは「形」から入ることも大切
(大慈弥)
CSというのは、いつ頃から、どういった事に注力されていましたか?
(岩内所長)
平成5、6年から本格化して10数年経っています。応対を良くする、業務知識を高めてお客様の期待に応えるといった基本概念は同じことなのですが、実際にやらせるのは大変でした。まずは「形から入ること」を徹底し、挨拶の仕方などをマニュアル化することは本意ではなかったのですが、行員に「心」を出させるために敢えてマニュアルを導入しました。
(大慈弥)
成果はいかがですか。
(岩内所長)
店頭での待ち時間などはかなり改善されていると思います。さらにお客様の状況の変化に応じて、きめ細かな対応ができるように指導をしています。行員の意識はだいぶ変わってきていまして、現在はCSを当たり前のようにやっていますね。
女性の役割は、この10年間で大きく変わりました。どちらかというと事務的な要員として捉えられていた女性が、現在では営業の戦力として定着化しています。投信販売を始めたことを転機に、女性行員は事務人員から完全に営業人員へと変わっています。
事務手続きを正確にやることのほか、お客様にきちんとした接客を行い、なおかつ金融商品の販売の上でも提案力を高めるということが今のCSには求められています。 また、最近では提供する商品が日々増えてきているので、一人一人のお客様にどんな商品をどのように提案するのかがCSのポイントとも言えるのです。
全員協力、みんなで喜び合う雰囲気
(大慈弥)
行員同士のコミュニケーションはどのようにとっていますか。
(岩内所長)
成果の配分に関して、例えば、投信をたくさん売った女性行員にボーナスを多く支給するということはしません。その行員が商品を獲得するためには、バックアップしてくれている人間がたくさんいるからです。行内の協力体制があって初めて自分の成績があがっているということをよく認識しているのです。そのためにも、行員同士のコミュニケーションを非常に大事にしています。
目標を達成するためには協力も必要です。例えば、窓口の案件が多く取れたときにはバックヤードにも伝えて、みんなで喜びあう雰囲気を作るようにしています。
一般的に銀行では、事務の評価がおろそかにされがちですが、当行は高く評価してくれているので、事務のバックヤードの行員も意識が高く、「自分たちが支えている」という気持ちが強くなってきていると感じます。
落ち着いたロビーでご相談
(大慈弥)
コンサルティングプラザの来店数、年齢層、男女比について教えて下さい。
(岩内所長)
この10月で2年が経過しますが、今年度は半期で約1万人のお客様にご来店いただきました。
年齢層については先日のデータ集計結果によると、20〜30代は20%強、40〜50代は約40%、60〜70代は37%と、分散されていることがわかりました。平日のセミナーに来るのはお年寄りの方が多いと思っていましたが、若い世代も増えています。
男女比はほぼ半分ですね。ご夫婦で来る方が多く、特に休日ご来店はご夫婦が多いです。
普通の店と違って落ち着いているところが良いようです。ロビーを見ると、それぞれにブースがありますので外からお客様が見えないようなレイアウトになっています。ゆったりとした雰囲気だと感じて入っていただけるようですね。一度ご相談に来られたお客様は必ず再度来店して下さいます。
(大慈弥)
土日や平日の午後3時以降も営業していることの効果はいかがですか。
(岩内所長)
営業店で対応できない時間帯に営業していますので、いつでも相談できる場所があって良いというお客様の評価をいただいています。休日は週に二日しかありませんが、来店客を曜日別に分類すると、休日が30%を越えますので土日に営業している効果は大きいと思います。また、来店客数の45%が午後3時以降にご来店しています。今まで捕捉できていなかった層のお客様にもご来店いただくことができるようになりました。
人気の講座、年間400回のセミナー開催
(大慈弥)
セミナーについて教えて下さい。
(岩内所長)
コンサルティングプラザの特色はこのセミナーです。年間400回行っていまして、単体の場所で開催しているセミナーとしてはおそらく日本最高水準を超えるのではないでしょうか。
講師は、当行の本部行員のほか、投資会社の人や税理士、会計士の先生にもお願いしています。テーマについては、抽象的ではなく、商品のそのものをテーマにするなどお客様にわかりやすいよう設定しています。
また、セミナーは、1、2回やって失敗したらやめてしまうことが多いと思いますが、当行では継続してやることで、1年経った頃から徐々にお客さまが増え始めました。
(大慈弥)
セミナーを開催した成果はいかがですか。
(岩内所長)
全ての講座で20〜30人が来るわけではなく、2人のときもあります。ただ、聴講者が2人で少ないということはありません。例えば、店頭にいる窓口係が、お客様を店頭に一人誘致して投資の話をするには相当な努力が必要です。夜でも昼でも、2人でも3人でもお客様が足を運んで聞きに来てくれることは大きな成果だと思います。
また、セミナーに何回か来ていただいたお客様は、商品の内容に納得した上でそれぞれのデスクに来ていただいています。こういったお客様の投信等の購入率は100%に近いと思います。
(大慈弥)
団塊の世代への戦略はとられていますか。
(岩内所長)
以前から退職前後の資産運用講座という講座を開設しています。また、近くに県庁や企業がありますので、プライベートセミナーもやっています。
オーダメイドのセミナーもこの場所でやっていますがこれももちろん無料です。 55歳〜65歳という、退職前後から年金を受け取る時期の生活設計をどのようにプランして行くのかというご相談が多くなってきています。
(大慈弥)
中央証券のカウンターが併設されていますが、株のご相談は多いのでしょうか。
(岩内所長)
お客様情報についてはいろいろな決まりがありますので、お客さまの名前を出して証券カウンターへご紹介というスタイルではやりませんが、お客様自身が自由に行き来していますね。不思議なことに株式投資を多く行っている方は投資信託に興味がないかと思われがちですが、投資信託の購入を検討する方は多くいらっしゃいます。一般のお客様にとっては、定期預金はリスクが少なく、投資信託はリスクがあると感じると思いますが、株式投資をしているお客様にとっては、投資信託はリスクのない商品と感じるようです。
おもてなしの心とプロの資格
(大慈弥)
所長が女性ということで親しみ易いといったお客様の反応はありますか。
(岩内所長)
実際に有ると思います。女性と男性は、それぞれの役目があると思いますが、お客様をもてなすといった接客業務で考えれば、女性は物腰が柔らかくて良いのではないでしょうか。ただ、男だから女だからというよりも、それぞれの役目をきちんと果たしてお客様を迎えています。
(大慈弥)
おもてなしで気をつけていらっしゃることはありますか。
(岩内所長)
お客様がやって欲しいと思う前に気がつき、すぐに動くように指導しています。さりげなく気配りの行き届いた、しっかりとした対応をするようにしています。
(大慈弥)
スタッフの方はどういうキャリアをお持ちですか。
(岩内所長)
年金を担当している行員は社労士の資格を持っています。ローンを中心にやってきた者もいますし、プライベートバンキングを専門的にやってきた者もいます。資産運用のスタッフはテラーの銀行検定を持っていまして、FP(フィナンシャルプランナー)の資格もまもなく取得する予定です。
社労士を除いて特別な資格を全員が持っているという特殊部隊ではありませんが、知識では負けないと思います。
女性の活躍とリテール戦略
(大慈弥)
他の地方銀行よりも投信や年金保険販売の数字が圧倒的に良いですね。その理由はなんでしょうか。
(岩内所長)
女性の活躍が大きいと思います。
投信では、金額ベースで40%以上は全部店頭で女性がとっています。
また、特に女性を中心として研修を多くやっていますので意識が高いということがあります。他にも全員体制で全ての行員が資格を持って販売をしているという、層の厚さも影響していると思います。
店頭の女性行員は、自分たちの仕事がどれだけ銀行全体の業績に貢献しているのかを理解しており、プラスの意識を与えていることは大きいと思います。収益面を担っているという意識が、年金預金や投信も含めて、実績面で他行をかなり引き離した状況を作ったと感じています。
新しいセミナーでお客様を開拓
(大慈弥)
今後の戦略をお聞かせ下さい。
(岩内所長)
宣伝のやり方を考え、セミナーの種類を変えて、いろいろな対象層の掘り起こしをやる必要があります。お客様に喜んでいただき、情報提供ができるセミナーの企画をしていきたいと思っています。
(大慈弥)
保険の窓口販売が2007年から自由化されますが、どのような戦略をお考えですか。
(岩内所長)
やり方自体は大きく変わらないと思います。ただ、新しい商品を取り入れ、新たなお客さまを開拓していくということで、セミナーテーマの選択や行員の研修をしていく必要があります。お客さまへの対応という面では、現在3つのブースがある資産運用デスクの1つが年金のご相談を担当していますが、そういった部分と保険販売との関連性はかなり高くなっていくでしょう。
2006/08/10 取材)|(2006/09/08 掲載)
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